はじめに
近年、不動産登記制度は大きな転換期を迎えています。
相続登記の義務化に続き、令和8年4月1日からは住所・氏名変更登記の義務化が開始されました。そして、この義務化に伴う負担を軽減するために導入されたのが「検索用情報の申出制度」です。
さらに、令和8年10月5日からは、検索用情報の申出事項に新たに「国籍」が追加されることになりました。
この記事では、
- 検索用情報の申出とは何か
- なぜ必要なのか
- 国籍追加の背景
- 具体的な申出事項
- 不動産売買や相続登記への影響
について、司法書士の視点からわかりやすく解説します。
検索用情報の申出とは?
検索用情報の申出とは、不動産の所有者について、法務局が住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)等を利用して住所や氏名の変更を確認できるようにするため、あらかじめ必要な情報を法務局へ提供する制度です。
この制度は、令和7年4月21日から開始されています。
従来は、不動産所有者が住所や氏名を変更した場合、自ら変更登記を申請しなければなりませんでした。
しかし、転居後に登記を放置する、結婚や離婚による氏名変更を放置するなどのケースが多く存在し、所有者不明土地問題の原因の一つとなっていました。
そこで創設されたのが「スマート変更登記」と「検索用情報の申出制度」です。
スマート変更登記とは?
令和8年4月1日から、住所・氏名変更登記が義務化されました。
もっとも、所有者が毎回登記申請を行うのは大きな負担です。
そこで法務局は、検索用情報を利用して住基ネットを検索し、所有者に確認した上で職権により住所変更登記を行う制度を導入しました。
これが「スマート変更登記」です。
スマート変更登記を利用するためには、事前に検索用情報を法務局へ届け出ておく必要があります。
検索用情報として申出する事項
現在の検索用情報は以下の事項です。
① 氏名
② フリガナ
③ 住所
④ 生年月日
⑤ メールアドレス ←法務局から確認通知を受け取るために利用されます。
令和8年10月5日から「国籍等」が追加
令和8年3月31日に公布された不動産登記規則の改正により、令和8年10月5日から検索用情報に「国籍等」が追加されます。
国籍等とは?
単なる国籍だけではありません。
法令上は、
- 国籍の属する国
- 出入国管理及び難民認定法で定める地域
が対象とされています。
「国籍」ではなく「国籍等」とされているのは、国家として承認されていない地域の出身者に配慮したものです。
なぜ国籍が追加されるのか?
近年、日本国内で不動産を所有する外国籍の方が増加しています。
一方で、同姓同名の問題、住民登録制度との違い、海外転出後の管理などにより、本人確認が難しくなるケースもあります。
国籍情報を取得することで、本人確認の精度向上、登記情報管理の適正化。所有者不明土地対策を図ることが目的とされています。
対象となる登記
検索用情報の申出が必要となる代表的な登記は次のとおりです。
所有権保存登記
新築建物などの初めての所有権登記。
所有権移転登記
売買や相続による名義変更。
所有権更正登記
新たに所有者となる方がいる場合。
合体による登記等
法令で定められた一定の登記。
相続登記への影響
相続登記においても、相続人が新たな所有者となる場合には検索用情報の申出が必要になります。
特に令和8年10月5日以降は、
- 相続人の国籍等
- 氏名フリガナ
- 生年月日
- メールアドレス
などを確認する必要があります。
司法書士へ依頼する際には、従来よりも確認事項が増えることになるでしょう。
売買による所有権移転への影響
不動産売買においても、買主が新たな所有者となる場合には検索用情報を提供します。
実務上は、
- 本人確認書類
- メールアドレス
- 国籍情報
などを事前に確認する流れが一般化すると考えられます。
特に外国籍の方が買主となる場合には、従来以上に正確な情報収集が必要となるでしょう。
すでに不動産を所有している方はどうする?
令和7年4月21日時点で既に不動産を所有している方も、検索用情報の単独申出が可能です。
申出方法は、
- オンライン申請
- 書面申請
のいずれかです。
事前に申出をしておくことで、将来の住所変更登記義務への対応が容易になります。
検索用情報の申出をしておくメリット
登記義務違反を防げる
スマート変更登記の対象となるため、住所変更登記忘れのリスクを軽減できます。
登記手続の負担軽減
転居のたびに司法書士へ依頼する必要がなくなる可能性があります。
所有者不明土地問題の防止
登記簿上の情報が最新化されやすくなります。
将来の相続手続が円滑になる
相続人による調査負担を減らす効果も期待できます。
司法書士に相談するメリット
検索用情報の申出自体は個人でも可能ですが、
- 相続登記と同時に行いたい
- 売買登記と併せて手続したい
- 登録内容に誤りがないか確認したい
という場合は司法書士への相談がおすすめです。
特に相続登記や売買登記では、検索用情報の記載漏れや誤記載があると補正が必要になる場合があります。
専門家による確認を受けることで、スムーズな登記手続が可能になります。
まとめ
検索用情報の申出制度は、住所等変更登記義務化とスマート変更登記を支える重要な制度です。
さらに令和8年10月5日からは、新たに「国籍等」が申出事項に追加されます。
今後は、
- 相続登記
- 売買による所有権移転登記
- 新築建物の保存登記
などにおいて、国籍情報の確認が必要になります。
不動産登記の手続は年々変化していますので、最新制度に対応した適切な手続を行うことが重要です。
参考リンク
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