相続手続きを進めようとした際に、「相続人の一人と連絡が取れない」「何年も所在が分からない相続人がいる」というケースは珍しくありません。
相続では、原則として相続人全員の参加が必要となるため、行方不明の相続人がいると遺産分割協議が進まず、不動産の相続登記や預貯金の解約ができない場合があります。
特に近年は相続登記の申請が義務化されたこともあり、「行方不明の相続人がいるから何もできない」と放置することは大きなリスクとなります。
この記事では、相続人が行方不明の場合の対処法や手続きの流れ、家庭裁判所での手続きについて、司法書士がわかりやすく解説します。
相続人が行方不明とはどういう状態?
法律上の「行方不明」とは、単に連絡先が分からない状態だけではありません。
例えば次のようなケースがあります。
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住所が分からない
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長年連絡を取っていない
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郵便を送っても返送される
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戸籍をたどっても居住地が確認できない
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海外へ移住して連絡が途絶えている
まず重要なのは、本当に所在不明なのかを調査することです。
相続人が行方不明でも勝手に遺産分割はできない
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。
たとえ一人でも参加していない相続人がいる場合、その遺産分割協議は無効となります。
例えば、
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被相続人:父
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相続人:長男・長女・次男
というケースで、次男が行方不明だからといって長男と長女だけで協議を行っても有効な遺産分割にはなりません。
その結果、不動産の相続登記ができない、預貯金が解約できない、将来的にトラブルになる
といった問題が発生します。
まずは戸籍と住民票で住所を調査する
相続人の所在が分からない場合は、まず住所調査を行います。
①戸籍を取得する
相続人の現在戸籍で本籍を確認し、戸籍の附票を取得します。
戸籍の附票には住所の履歴が記載されているため、現在の住所を把握できる場合があります。
②住民票を確認する
住民票や除票を取得し、現住所や転出先を確認します。
③郵便を送る
判明した住所へ通知を送付します。
内容証明郵便や配達証明付き郵便を利用することで、通知の事実を残すことができます。
意外とこの段階で連絡が取れるケースも少なくありません。
住所は分かるが連絡が取れない場合
住所が判明しているにもかかわらず返事がない場合があります。
この場合は「行方不明者」ではなく、単に協議に応じない相続人です。
その場合は家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てます。
遺産分割調停とは
家庭裁判所が間に入り、財産内容の確認、相続人の意向確認、分割方法の調整を行う手続きです。
本当に所在不明の場合は不在者財産管理人を選任する
住所調査を行っても所在が分からない場合には、
「不在者財産管理人」
の選任を家庭裁判所へ申し立てます。
不在者財産管理人とは?
不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産を管理する人のことです。
家庭裁判所が選任します。通常は弁護士などが選任されます。
不在者財産管理人選任の流れ
①家庭裁判所へ申立て
必要書類を準備して申し立てます。
主な書類は、
(1)申立書
(2)標準的な申立添付書類
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- 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 不在者の戸籍附票
- 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
- 不在の事実を証する資料
- 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
- 利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),賃貸借契約書写し,金銭消費貸借契約書写し等)
などです。
②家庭裁判所による審理
家庭裁判所が、本当に所在不明か、管理人選任が必要かを審査します。
③不在者財産管理人の選任
選任後は管理人が不在者の代理人として行動します。
④家庭裁判所の許可
家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって「遺産分割」「不動産の売却」などを行うことができます。
失踪宣告という方法
長期間行方不明の場合には失踪宣告を検討することがあります。
普通失踪
7年間生死不明の場合
特別失踪
災害や事故などで死亡の可能性が高い場合
失踪宣告が確定すると法律上死亡したものとみなされます。
その結果、相続関係が整理されることになります。
ただし手続きの影響が大きいため慎重な検討が必要です。
行方不明の相続人がいる場合によくある事例
事例1:兄弟相続で所在不明者がいたケース
京都市内に住むAさんは叔父の相続手続きを進めていました。
叔父には配偶者も子どももおらず、兄弟姉妹が相続人となりました。
しかし、相続人の一人である弟が30年以上前から連絡不通でした。
司法書士が戸籍や附票を調査した結果、住所が判明しなかったため、不在者財産管理人の選任を申し立てました。
その後、家庭裁判所の許可を得て遺産分割を成立させ、不動産の相続登記を完了できました。
事例2:空き家の相続登記が進まなかったケース
被相続人名義の空き家を売却したいものの、相続人の一人が所在不明でした。
そのままでは売却も相続登記もできません。
不在者財産管理人を選任したことで手続きを進めることができ、無事に売却まで完了しました。
相続登記義務化との関係
2024年4月から相続登記が義務化されました。
不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請を行う必要があります。
正当な理由なく放置した場合には過料の対象となる可能性があります。
行方不明の相続人がいるケースでも、早めに専門家へ相談し、必要な手続きを開始することが重要です。
相続人が行方不明の場合は司法書士へ相談を
相続人の所在不明は、
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戸籍収集
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住所調査
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家庭裁判所への申立て
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相続登記
など複雑な手続きが必要になります。
特に不在者財産管理人の選任が必要になるケースでは、書類作成や裁判所対応に専門知識が求められます。
相続人と連絡が取れないからといって放置すると、手続きがさらに複雑になる場合があります。
早めの対応が円滑な相続手続きにつながります。
まとめ
相続人が行方不明の場合でも、相続手続きを進める方法はあります。
ポイントは次のとおりです。
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遺産分割協議は相続人全員の参加が必要
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まず戸籍や附票で住所調査を行う
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住所が判明している場合は遺産分割調停を検討する
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所在不明の場合は不在者財産管理人を選任する
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長期間生死不明なら失踪宣告も検討する
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相続登記義務化により早めの対応が重要
相続人が行方不明でお困りの場合は、司法書士へご相談ください。
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相続登記、遺産分割協議、不在者財産管理人の申立てに関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。
参考リンク
法務省 :相続登記の申請義務化特設ページ
家庭裁判所:不在者財産管理人選任
家庭裁判所:失踪宣告


