相続対策や遺言書作成を検討している方の中には、

  • 「相続人がいないので財産をどうしたらよいかわからない」
  • 「不動産を売却してからお世話になった人へお金を渡したい」
  • 「複数の財産を整理したうえで寄付したい」

とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような場合に活用されるのが「清算型遺贈(せいさんがたいぞう)」です。

一般的な遺贈では不動産や預貯金などの財産そのものを受遺者(財産を受け取る人)へ引き継ぎますが、清算型遺贈では遺産を換価(売却)したうえで、その売却代金を受遺者へ渡します。

この記事では、清算型遺贈の概要、利用するメリット・デメリット、具体例、注意点について司法書士がわかりやすく解説します。


清算型遺贈とは

清算型遺贈とは、遺言者が亡くなった後に遺産を売却・換価し、その代金を特定の人や団体へ遺贈する方法です。

例えば次のような内容です。
「私の所有する不動産その他の財産を売却し、債務・諸費用を支払った残余財産の全てを○○へ遺贈する。」

通常の遺贈では不動産や預金をそのまま引き継ぎますが、清算型遺贈では財産を現金化してから渡す点が特徴です。


遺贈とは

遺贈とは、遺言によって財産を無償で譲ることをいいます。

受け取る相手は、人でなくても大丈夫です。

例えば、

  • 内縁の妻
  • 長年介護をしてくれた親族
  • お世話になった友人
  • 母校
  • 公益法人
  • 社会福祉法人

などに財産を残すことができます。


清算型遺贈が利用されるケース

① 相続人がいない場合

近年増加しているのが、

  • 配偶者がいない
  • 子どもがいない
  • 兄弟姉妹も亡くなっている

というケースです。

法定相続人が存在しない場合、遺言書がなければ最終的に財産は国庫へ帰属する可能性があります。

しかし、

  • お世話になった友人
  • 母校
  • 公益法人
  • 地域団体

などへ財産を残したい場合は、清算型遺贈が有効です。


② 不動産しか財産がない場合

遺産の大部分が不動産であるケースも少なくありません。

受遺者が不動産を必要としていない場合、「不動産はいらないが現金なら受け取りたい」

ということがあります。

その場合、不動産を売却してから代金を渡す清算型遺贈が適しています。


③ 公益団体へ寄付したい場合

最近は社会貢献の一環として、

  • 日本赤十字社
  • 社会福祉法人
  • 大学
  • 公益財団法人

などへ財産を寄付したいという相談も増えています。

不動産をそのまま受け取れない団体もあるため、現金化してから寄付する方法が採用されることがあります。


清算型遺贈のメリット

財産を分けやすい

不動産は分割が困難です。

例えば、

  • 自宅
  • 駐車場
  • 農地

などを複数人で共有すると将来的なトラブルの原因になります。

現金化することで公平に分配しやすくなります。


不動産管理の負担をなくせる

受遺者が遠方に住んでいる場合、

  • 固定資産税の支払い
  • 建物管理
  • 草刈り
  • 空き家管理

などの負担が発生します。

現金で受け取れば管理負担はありません。


公益法人などへ寄付しやすい

公益法人や学校法人では、不動産の受入れに制限がある場合があります。

そのため換価後の現金で遺贈する方がスムーズです。


相続人同士の争いを減らせる

不動産の評価は意見が分かれやすく、

  • 売却するか
  • 誰が取得するか
  • 価格はいくらか

などで争いになることがあります。

現金化することでトラブル防止につながります。


清算型遺贈のデメリット

売却に時間がかかる

不動産市場の状況によっては、

  • 数か月
  • 1年以上

売却できないこともあります。

受遺者が現金を受け取るまで時間がかかる可能性があります。


売却費用がかかる

不動産売却には、

  • 仲介手数料
  • 登記費用
  • 測量費用
  • 解体費用

などが必要になる場合があります。


清算型遺贈で重要な「遺言執行者」

清算型遺贈では、遺言執行者の指定が非常に重要です。

遺言執行者とは、

  • 不動産売却
  • 預金解約
  • 債務弁済
  • 受遺者への交付

などを行う人です。

適切な遺言執行者がいないと手続きが進まなくなる可能性があります。

そのため、

  • 司法書士
  • 弁護士
  • 信託銀行

などの専門家を遺言執行者に指定するケースが多く見られます。


清算型遺贈の遺言文例

例としては次のような内容になります。

遺言者は、その有する一切の財産を換価処分し、債務及び遺言執行費用を支払った残余財産の全部を〇〇に遺贈する。

実際には、

  • 不動産の内容
  • 受遺者
  • 費用負担
  • 売却方法

などを詳細に定める必要があります。

文言を誤ると遺言の解釈を巡って紛争になることもあるため、専門家による作成をおすすめします。


清算型遺贈と包括遺贈の違い

項目 清算型遺贈 包括遺贈
財産の渡し方 売却後の現金 財産そのもの
不動産取得 なし あり
管理負担 少ない 大きい場合あり
売却手続き 必要 不要
寄付との相性 良い 場合による

清算型遺贈を検討すべき人

次のような方には特におすすめです。

  • 相続人がいない方
  • 独身の方
  • 子どもがいないご夫婦
  • 不動産が財産の大部分を占める方
  • 内縁配偶者へ財産を残したい方
  • 公益法人へ寄付したい方
  • 遺産整理を円滑に行いたい方

まとめ

清算型遺贈とは、遺産を売却・換価したうえで、その代金を受遺者へ引き継ぐ方法です。

特に、

  • 相続人がいない方
  • 不動産中心の財産構成の方
  • 公益団体への寄付を希望する方
  • 内縁配偶者へ財産を残したい方

にとって有効な選択肢となります。

ただし、

  • 遺言書の作成方法
  • 税務上の問題
  • 遺言執行者の選任

など専門的な検討が必要です。

将来のトラブル防止のためにも、司法書士や弁護士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。


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