はじめに
「せっかく遺言書を作ったのに、思ったとおりに財産を承継できなかった」
実は、このような事態は決して珍しくありません。
遺言書を作成する際、多くの方は「自分が亡くなったときに、指定した相続人や受遺者が財産を受け取ること」を前提に考えます。しかし、遺言者よりも先に相続人や受遺者が亡くなってしまうケースもあります。
このような場合に備えて設けるのが「予備的条項(よびてきじょうこう)」です。
予備的条項を入れておくことで、想定外の事態が発生した場合でも遺言者の意思をできる限り実現しやすくなります。
この記事では、予備的条項の意味や必要性、具体例、注意点について司法書士がわかりやすく解説します。
予備的条項とは?
予備的条項とは、遺言書に記載した受遺者や相続人が財産を取得できない場合に備えて、代わりに財産を取得する人を指定しておく条項のことです。
例えば、
長男に自宅を相続させる
長女に預貯金を相続させる
という遺言を作成したとします。
ところが、遺言者が亡くなる前に長男が亡くなってしまった場合、自宅を誰が取得するのかという問題が生じます。
このような場合に備え、
「長男が私より先に死亡していた場合は、長男の子○○に相続させる」
という内容を記載しておけば、遺言者の希望に近い形で財産を承継させることができます。
これが予備的条項です。
なぜ予備的条項が必要なのか
- 相続人が先に亡くなる可能性がある
遺言書を作成してから実際に相続が発生するまでには何年、何十年もの期間が空くことがあります。
その間に、
子ども
配偶者
兄弟姉妹
孫
などが先に亡くなる可能性は十分あります。
特に高齢の方が作成する遺言では、相続発生まで長期間になることも少なくありません。
- 遺言の一部が無効になる可能性がある
遺言で指定された人が先に亡くなった場合、その部分の遺言の効力が失われることがあります。
すると、
遺言で指定したかった財産
特定の不動産
預貯金
などについて、法定相続による処理が必要になる場合があります。
結果として、
遺産分割協議が必要になる
相続人同士の意見が対立する
相続手続きが複雑になる
といった問題につながります。
- 相続トラブル防止につながる
予備的条項があることで、
「もし○○が先に亡くなっていたら△△に承継させる」
という意思が明確になります。
相続人同士で
「お父さんはどう考えていたのだろう」
という議論になることを防ぐことができます。
予備的条項が特に重要となるケース
子どもが一人しかいない場合
例えば、
妻はすでに死亡
子どもは長男のみ
というケース。
遺言で
「全財産を長男に相続させる」
としていても、長男が先に亡くなれば想定外の相続となる可能性があります。
そのため、
「長男が先に死亡していた場合は長男の子に相続させる」
という予備的条項が有効です。
子どものいない夫婦
子どものいない夫婦では、
「全財産を妻に相続させる」
という遺言がよくあります。
しかし妻が先に亡くなった場合には、夫の兄弟姉妹や甥姪が相続人になることがあります。
そこで、
「妻が先に死亡していた場合は甥○○に遺贈する」
などの予備的条項を設けることがあります。
特定の孫に財産を承継したい場合
例えば、
長男に不動産を相続させる
長男が先に亡くなった場合は孫に相続させる
というように二段階で承継先を指定できます。
内縁配偶者へ財産を残したい場合
内縁配偶者には法定相続権がありません。
そこで、
「内縁の妻○○に自宅を遺贈する」
という遺言を作成することがあります。
しかし、その方が先に亡くなった場合に備え、
「○○が先に死亡していた場合は△△へ遺贈する」
と定めることで意思を明確にできます。
不動産を相続させる場合の予備的条項
司法書士の実務で特に重要なのが不動産です。
例えば、
予備的条項なし
第1条
京都市○○区所在の土地建物を長男Aに相続させる。
↓
Aが先に死亡
↓
誰が取得するか不明
↓
相続人全員による協議が必要
予備的条項あり
第1条
京都市○○区所在の土地建物を長男Aに相続させる。
第2条
Aが遺言者より先に死亡した場合は、Aの子Bに相続させる。
↓
スムーズな相続登記が可能
遺贈の場合の予備的条項
相続人ではない第三者に財産を渡す場合にも重要です。
例えば、
お世話になった親族
内縁配偶者
介護してくれた親族
などへ遺贈するケースがあります。
しかし、その受遺者が先に死亡していた場合、遺贈は効力を失う可能性があります。
そのため、
「受遺者○○が先に死亡した場合は△△に遺贈する」
という規定を設けることが有効です。
予備的条項を作成する際の注意点
誰を予備的受益者にするか慎重に検討する
予備的に財産を取得する人を決める際には、
家族関係
将来の生活状況
財産管理能力
などを考慮する必要があります。
遺留分への配慮
予備的条項を設けても、遺留分制度は適用されます。
そのため、
特定の人に財産を集中させる
他の相続人を極端に排除する
ような内容の場合は注意が必要です。
定期的な見直しが重要
遺言書は一度作ったら終わりではありません。
子どもが結婚した
孫が生まれた
家族が亡くなった
財産状況が変わった
などの事情があれば見直しを検討しましょう。
一般的には3~5年ごとの見直しがおすすめです。
公正証書遺言で作成するメリット
予備的条項を含む遺言は内容が複雑になることがあります。
そのため、
記載ミスを防げる
法的に有効な内容になりやすい
原本が公証役場で保管される
紛失リスクがない
という点から、公正証書遺言の利用が推奨されます。
特に不動産や多額の財産がある場合には、公正証書遺言の活用を検討するとよいでしょう。
司法書士に相談するメリット
予備的条項は一見すると簡単な規定に見えますが、
家族構成
相続関係
不動産の有無
遺留分
将来の相続税対策
などを総合的に考慮する必要があります。
司法書士へ相談することで、
適切な遺言内容の提案
不動産承継の検討
相続登記を見据えた遺言作成
公正証書遺言作成支援
を受けることができます。
まとめ
遺言書の予備的条項とは、相続人や受遺者が遺言者より先に亡くなった場合に備えて、代わりに財産を取得する人を定める規定です。
予備的条項を設けておくことで、
遺言者の意思を実現しやすくなる
相続手続きを円滑に進められる
相続人間のトラブルを防げる
不動産の承継先を明確にできる
というメリットがあります。
特に不動産を所有している方や、特定の家族に財産を承継したい方は、予備的条項を含めた遺言書の作成を検討されることをおすすめします。
ご相談は不動リーガルオフィスへ
不動リーガルオフィスでは、相談のご予約受付中です。
土日祝も相談可能
京都市内は出張料無料
お気軽にご相談ください。
