「親に借金があるかもしれないので相続放棄をしたい」
「相続放棄をすれば、実家の管理もしなくてよくなるの?」
「預貯金だけ受け取って借金は放棄できる?」

相続放棄について、このような疑問を持たれる方は少なくありません。

相続放棄は、亡くなった方(被相続人)の財産や借金を一切引き継がないための制度ですが、実際にはいくつか重要な注意点があります。

この記事では、相続放棄をすると借金はどうなるのか、預貯金や不動産との関係、相続放棄後の管理責任について司法書士が分かりやすく解説します。

相続放棄とは

相続放棄とは、家庭裁判所に申述を行い、「最初から相続人ではなかったもの」として扱われる制度です。

相続放棄が認められると、プラスの財産もマイナスの財産も一切引き継ぎません。

相続放棄の対象となるもの

プラスの財産

  • 預貯金
  • 現金
  • 不動産
  • 株式・投資信託
  • 自動車
  • 貴金属・骨董品

マイナスの財産

  • 銀行借入
  • 消費者金融からの借金
  • クレジットカードの未払金
  • 住宅ローン
  • 保証債務
  • 税金や公共料金の滞納金

相続放棄をすると、これらをまとめて引き継がないことになります。

 

相続放棄すると借金はどうなる?

結論からいうと、相続放棄をすれば亡くなった方の借金を返済する義務はなくなります。

例えば、

  • 親に500万円の借金がある
  • 住宅ローンが残っている
  • 消費者金融から借入れがある

といった場合でも、相続放棄をすれば返済義務を負いません。

債権者から請求書や督促状が届いた場合でも、相続放棄受理証明書などを提示することで対応できます。

ただし、相続放棄をする前に故人の預貯金を引き出したり、遺産を処分したりすると「相続を承認した」と判断される可能性があるため注意が必要です。

 

預貯金だけ受け取って借金は放棄できる?

できません。

相続放棄は財産全体について行う制度です。

例えば、

  • 預貯金300万円
  • 借金500万円

という場合に、

「預貯金だけもらって借金は放棄する」

ということは認められていません。

相続放棄をするのであれば、預貯金も含めてすべて放棄する必要があります。

 

相続放棄前に預貯金を引き出してはいけない

相続放棄を検討している場合、故人の口座から生活費や葬儀費用としてお金を引き出してしまうケースがあります。

しかし、状況によっては単純承認(相続を受け入れたこと)と判断される可能性があります。

特に、

  • 預金を自分のために使う
  • 解約して受け取る
  • 遺産を売却する

といった行為は注意が必要です。

相続放棄を考えている場合は、財産に手を付ける前に専門家へ相談することをおすすめします。

 

相続放棄すると不動産はどうなる?

相続放棄をすると、土地や建物の所有権も取得しません。

そのため、

  • 固定資産税
  • 修繕費
  • 管理費

などを負担する義務も原則としてなくなります。

しかし、ここで問題になるのが「管理責任」です。

 

相続放棄しても不動産の管理責任が残る場合がある

令和5年(2023年)4月施行の民法改正により、相続放棄後の義務は「管理義務」から「保存義務」に変更されました。放棄時に相続財産を現に占有している人は、次の相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで、その財産を保存する義務があります。

現に占有しているとは?

例えば、

  • 故人と同居していた
  • 実家に住み続けている
  • 鍵を保管し管理している

といった場合です。

このようなケースでは、相続放棄後も一定期間、不動産を適切に管理する必要があります。

現に占有していない場合

一方、

  • 長年別居していた
  • 実家の管理をしていなかった
  • 遠方に住んでいた

といった場合には、通常は保存義務を負わないと考えられています。

 

空き家を放置するとどうなる?

仮に保存義務がある状態で空き家を放置し、

  • 建物が倒壊した
  • 屋根が飛散した
  • 樹木が隣地へ越境した

など第三者に損害を与えた場合には、損害賠償責任が問題となる可能性があります。

そのため、相続放棄後であっても現に占有している不動産については最低限の管理が必要です。

 

相続人全員が相続放棄した場合は?

相続人全員が相続放棄すると、相続財産は最終的に国庫へ帰属する可能性があります。

しかし自動的に国の管理になるわけではありません。

相続財産の管理者がいない場合には、家庭裁判所へ「相続財産清算人」の選任申立てを行うことがあります。

保存義務を負う人は、相続財産清算人へ財産を引き渡すことで義務から解放されます。

 

相続放棄の期限

相続放棄は、

「自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内」

に家庭裁判所へ申述しなければなりません。

借金の有無が不明な場合は、まず財産調査を行い、必要に応じて専門家へ相談しましょう。

 

まとめ

相続放棄をすると、借金や保証債務を含めたマイナスの財産を引き継ぐ必要はなくなります。

ただし、

  • 預貯金だけ受け取ることはできない
  • 遺産を処分すると相続放棄できなくなる場合がある
  • 実家などを現に占有している場合は保存義務が残ることがある

といった重要な注意点があります。

相続放棄は一度受理されると原則として撤回できません。借金の有無や財産状況を十分に確認したうえで手続きを進めることが大切です。

不動リーガルオフィスでは、相続放棄のご相談から家庭裁判所への申述書作成サポートまで対応しております。相続放棄をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。