特に、平成30年(2018年)の民法改正では、相続に関するルールが大きく変わりました。
そのため、古い相続案件では「現在の法律では認められているのに、当時の法律では違う扱いになる」というケースも少なくありません。
今回は、相続開始時期による違いと、実務上注意すべきポイントについて解説します。
相続は「亡くなった時」の法律が適用されます
相続は、被相続人(亡くなった方)が亡くなった時点で開始します。
そして、相続に適用される法律は、原則として「死亡時点の民法」です。
つまり、
- 令和以降に亡くなった場合
→ 現在の民法 - 昭和・平成初期に亡くなった場合
→ 当時の古い民法
が適用されます。
そのため、現在の法律知識だけで判断すると、誤った結論になることがあります。
特に注意が必要な改正ポイント
1.配偶者居住権は古い相続には使えない
令和2年(2020年)4月から「配偶者居住権」が新設されました。
これは、亡くなった方の配偶者が自宅に住み続けやすくする制度です。
しかし、この制度は令和2年4月1日以降に開始した相続にしか適用されません。
例えば、
- 平成30年に夫が死亡
- 妻が現在も居住中
であっても、配偶者居住権は利用できません。
「今も住んでいるから使える」と誤解されることがあるため注意が必要です。
2.自筆証書遺言の方式が異なる
現在は、自筆証書遺言について財産目録をパソコンで作成することが認められています。
しかし、以前は全文を自筆で書く必要がありました。
古い時代に作成された遺言では、
- パソコン部分がある
- 代筆がある
- 日付が不明確
などの理由で無効になる可能性があります。
遺言の有効性は「作成当時の法律」で判断されるため、現在の基準で考えてはいけません。
3.相続分の計算ルールが異なる場合がある
相続分に関するルールも、時代によって変更されています。
例えば、以前は非嫡出子(婚姻外の子)の法定相続分は、嫡出子の2分の1とされていました。
しかし、現在は嫡出子と同じ割合になっています。
そのため、
- 昔に開始した相続
- 長期間放置されている相続
では、現在とは異なる相続割合で計算しなければならないケースがあります。
4.遺留分制度も改正されています
現在の遺留分侵害請求は「金銭請求」となっています。
しかし、以前は「遺留分減殺請求」と呼ばれ、共有持分が当然に発生する制度でした。
古い相続案件では、
- 不動産が共有状態になっている
- 持分が複雑化している
- 昔の遺留分請求の影響が残っている
というケースがあります。
特に不動産登記では重要な論点になるため、慎重な確認が必要です。
5.相続登記の義務化は過去の相続にも影響します
令和6年(2024年)4月から、相続登記が義務化されました。
ここで注意したいのは、昔の相続であっても、未登記なら義務化の対象になる場合があるという点です。
例えば、
- 昭和時代に相続発生
- 名義変更をしていない
というケースでも、現在の法律により相続登記義務が問題になることがあります。
長年放置された相続では、
- 相続人が増えている
- 行方不明者がいる
- 必要書類が取得困難
など、手続が非常に複雑になることもあります。
古い相続ほど専門的な判断が必要です
相続では、
- 「いつ亡くなったか」
- 「どの法律が適用されるか」
- 「当時の制度がどうだったか」
を正確に確認する必要があります。
特に、
- 昭和時代の相続
- 数次相続
- 相続登記未了
- 古い遺言書
- 相続人関係が複雑
といったケースでは、法律改正の影響を受けることが少なくありません。
まとめ
相続は、「現在の民法」だけで判断できるとは限りません。
被相続人が亡くなった時期によって、
- 適用される法律
- 相続割合
- 遺言の有効性
- 遺留分の扱い
- 利用できる制度
などが変わる場合があります。
古い相続案件では、当時の法律を前提に慎重な検討が必要です。
「昔の相続だから簡単」と思って放置すると、後々大きなトラブルになることもあります。
不動リーガルオフィスでは、古い相続案件や複雑な相続登記についても対応しております。
相続関係が長年整理されていない場合も、お気軽にご相談ください。

