「親の代わりにATMでお金を下ろしている」
「介護費用の支払いを家族が行っている」
このようなケースは、現在の日本では珍しくありません。
特に高齢の親が一人暮らしをしている場合や、認知症の症状が出始めている場合には、子どもが通帳やキャッシュカードを管理することも多くあります。
しかし、家族だからといって自由に預金を管理してよいわけではありません。
場合によっては、他の相続人とのトラブル、金融機関での問題、さらには「使い込み」を疑われるリスクまで生じることがあります。
この記事では、高齢の親の通帳管理について、司法書士の視点から法律上の注意点や安全な管理方法を詳しく解説します。
高齢の親の通帳を家族が管理するケースは増えている
高齢化が進む中で、親の財産管理を家族がサポートする場面は増加しています。
例えば、次のような事情があります。
- 親がATM操作に不安を感じている
- 足腰が弱く銀行へ行けない
- 介護施設への入居費用を家族が支払っている
- 認知症の症状が始まっている
- 公共料金の管理が難しくなっている
こうした場合、子どもが通帳や印鑑を預かること自体は違法ではありません。
しかし、「親のために管理している」という意識だけで進めてしまうと、後々大きな問題になることがあります。
家族が勝手に親の預金を引き出すと問題になる理由
1.親の財産は親本人のもの
当然ですが、親の預金は親本人の財産です。
たとえ子どもであっても、本人の同意なく自由に使う権限はありません。
「家族だから問題ない」
「いずれ相続する財産だから」
という考え方は法律上通用しません。
親が元気なうちはもちろん、認知症になった後でも、財産は本人のものとして保護されます。
2.他の相続人から使い込みを疑われる
最も多いトラブルがこれです。
例えば長男が親の通帳を管理していた場合、相続発生後に他の兄弟姉妹から、
- 多額の出金がある
- 使途が不明
- 現金が残っていない
- 生前贈与ではないか
と疑われることがあります。
実際、相続トラブルでは「親の預金を管理していた子ども」が問題になるケースは非常に多くあります。
特に以下のような状況は危険です。
- 現金で頻繁に引き出している
- 領収書を残していない
- 家族名義の口座へ移している
- 親名義のカードを自由に利用している
管理している本人に悪気がなくても、証拠が残っていなければ説明が困難になります。
認知症になるとさらに注意が必要
判断能力低下後の預金管理はリスクが高い
親が認知症になると、法律上の問題はさらに複雑になります。
認知症により判断能力が低下すると、
- 財産管理契約
- 贈与
- 委任
などの法律行為が有効に成立しない可能性があります。
つまり、「親から頼まれていた」という説明だけでは不十分になることがあるのです。
金融機関が口座凍結するケースもある
金融機関が認知症を把握すると、口座が凍結されることがあります。
例えば、
- 窓口で会話が成立しない
- 家族が認知症を申告した
- 成年後見人が必要と判断された
などの場合です。
口座が凍結されると、
- 預金引き出し
- 定期預金解約
- 振込
- 各種変更手続
などができなくなります。
介護費用や施設費用の支払いに困るケースも少なくありません。
家族が親の通帳を管理する際の注意点
1.管理目的を明確にする
まず重要なのは、「親のための管理」であることを明確にすることです。
例えば、
- 生活費支払い
- 介護費用
- 医療費
- 公共料金
- 施設利用料
など、目的を整理しておきましょう。
2.収支記録を残す
非常に重要です。
以下を必ず残すようにしましょう。
- 出金日
- 金額
- 使用目的
- 領収書
- レシート
- 通帳コピー
エクセルやノートでも構いません。
「何に使ったのか」を説明できる状態にしておくことが重要です。
3.家族口座へ安易に移さない
親の預金を子ども名義口座へ移す行為は非常に危険です。
後日、
- 贈与
- 使い込み
- 特別受益
として争いになることがあります。
特に多額の資金移動は注意が必要です。
4.兄弟姉妹へ情報共有する
相続トラブル予防として非常に有効です。
例えば、
- 毎月の支出状況
- 介護費用
- 残高推移
などを共有しておくだけでも、後々の疑念を減らせます。
「一人だけで管理しない」ことが大切です。
親の通帳管理でよくあるトラブル事例
ケース1:介護費用として引き出していたが証明できない
長女が長年親の介護を担当。
親の口座から生活費や介護費を引き出していましたが、領収書を残していませんでした。
相続発生後、兄弟から「使い込みではないか」と主張され、遺産分割協議がまとまらなくなりました。
ケース2:親名義口座から子ども口座へ資金移動
認知症対策として、親の預金を長男口座へ移していたケース。
しかし、後に他の相続人から「勝手な贈与」と問題視され、裁判に発展しました。
ケース3:認知症後に作成した委任状が無効に
認知症が進行した後に委任状を作成していたケース。
金融機関から「本人に判断能力がない」と判断され、手続が認められませんでした。
安全な財産管理方法とは?
家族信託の活用
近年増えているのが「家族信託」です。
家族信託とは、親が元気なうちに、信頼できる家族へ財産管理を託す制度です。
例えば、
- 長男が預金管理
- 不動産管理
- 施設費支払い
などを正式な契約として行えます。
認知症対策として非常に有効です。
任意後見契約
将来認知症になった場合に備える制度です。
元気なうちに、
「判断能力低下後はこの人に管理を任せる」
と契約します。
家庭裁判所の監督下で管理されるため、透明性が高い制度です。
成年後見制度
すでに認知症が進行している場合は、成年後見制度の利用を検討します。
成年後見人が選任されると、
- 預金管理
- 不動産管理
- 各種契約
などを法的に行えます。
ただし、一度開始すると自由に終了できないため慎重な検討が必要です。
親の財産管理は「善意」だけでは危険
家族による通帳管理は、介護や生活支援の現場では現実的に必要なことも多くあります。
しかし、
- 法律
- 相続
- 認知症
- 家族関係
が関わるため、非常に繊細な問題です。
「親のためにやっていた」
という善意だけでは、後々トラブルを防げないことがあります。
特に認知症が関係すると、手続が急に難しくなるケースも少なくありません。
早めに専門家へ相談し、適切な財産管理方法を検討することが重要です。
京都で親の財産管理・認知症対策のご相談は司法書士へ
高齢の親の通帳管理や財産管理については、
- 家族信託
- 任意後見
- 成年後見
- 生前対策
- 相続対策
などを総合的に検討する必要があります。
当事務所では、京都を中心に、高齢者の財産管理や認知症対策に関するご相談を承っております。
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