はじめに
「遺言書を作成したいけれど、“特定遺贈”や“包括遺贈”という言葉が難しくてよくわからない」
「相続手続きで“包括受遺者”という言葉が出てきたが、どういう意味なのか知りたい」
このようなお悩みをお持ちの方は少なくありません。
遺言書を作成する際には、「誰に」「どの財産を」「どのように」引き継がせるのかを明確にする必要があります。その際に重要となるのが、「特定遺贈」と「包括遺贈」の違いです。
この違いを正しく理解していないと、遺言書の内容が曖昧になったり、相続人同士のトラブルにつながったりする可能性があります。
この記事では、特定遺贈と包括遺贈の違いについて、司法書士がわかりやすく解説します。遺言書作成を検討している方や、相続手続きを進めている方はぜひ参考にしてください。
遺贈とは?
まず、「遺贈(いぞう)」とは、遺言によって財産を無償で譲り渡すことをいいます。
例えば、
- 「長男に自宅不動産を遺贈する」
- 「友人に預金500万円を遺贈する」
など、遺言書によって財産を与える行為が遺贈です。
遺贈には大きく分けて、
- 特定遺贈
- 包括遺贈
の2種類があります。
特定遺贈とは?
特定遺贈の意味
特定遺贈とは、「特定の財産」を指定して渡す遺贈のことです。
例えば、
- 京都市南区の土地を長女に遺贈する
- ○○銀行の預金300万円を孫に遺贈する
- 株式会社△△の株式100株を弟に遺贈する
など、財産を具体的に指定している場合は特定遺贈となります。
特定遺贈の特徴
1.対象財産が明確
「どの財産を渡すのか」が明確であるため、遺言内容がわかりやすいという特徴があります。
不動産や預金などを個別に指定できるため、遺産分けの意思を明確に示しやすい方法です。
2.債務は原則引き継がない
特定遺贈では、通常、その財産のみを取得します。
例えば、
- 不動産だけ取得する
- 預金だけ取得する
という形になるため、被相続人の借金などを包括的に承継するわけではありません。
3.放棄しやすい
特定遺贈を受けた人(受遺者)は、遺贈を放棄することもできます。
しかも、包括遺贈と異なり、相続放棄のような厳格な期間制限がありません。
特定遺贈のメリット
財産を具体的に指定できる
例えば、
- 「自宅は妻へ」
- 「収益不動産は長男へ」
- 「預金は長女へ」
など、遺産の承継先を細かく指定できます。
トラブル防止につながる
遺産の内容が明確になるため、相続人間の争いを防ぎやすくなります。
特に不動産については、「誰が取得するのか」を明記しておくことが重要です。
特定遺贈の注意点
財産の記載ミスに注意
不動産の表示や預金口座の記載が曖昧だと、手続きで問題になることがあります。
例えば、
- 地番の誤記
- 銀行名変更への未対応
- 口座番号の誤り
などがあると、相続登記や金融機関での手続きがスムーズに進まない場合があります。
財産がなくなる可能性がある
遺言作成後に財産を売却した場合、特定遺贈の対象財産自体が存在しなくなることがあります。
例えば、
「自宅不動産を遺贈する」
と書いていても、その後売却してしまえば、その遺贈は実現できません。
包括遺贈とは?
包括遺贈の意味
包括遺贈とは、「遺産の全部」または「一定割合」を与える遺贈のことです。
例えば、
- 全財産の3分の1を友人に遺贈する
- 財産の全部を内縁の妻に遺贈する
などのケースです。
個別財産を指定せず、割合や包括的な権利として与える点が特徴です。
包括遺贈の特徴
1.相続人に近い立場になる
包括受遺者は、法律上、相続人に近い扱いを受けます。
そのため、
- 遺産分割協議への関与
- 債務承継
- 遺留分との関係
など、実務上重要な問題が発生します。
2.借金なども承継する可能性がある
包括遺贈では、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金等)も含めて承継する可能性があります。
例えば、
- 住宅ローン
- 事業債務
- 未払金
なども対象になる場合があります。
そのため、包括遺贈を受ける側は注意が必要です。
3.放棄には期間制限がある
包括遺贈の放棄は、相続放棄に近い扱いとなるため、原則として自己のために遺贈があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります。
期間を過ぎると、放棄できなくなる可能性があります。
特定遺贈と包括遺贈の違い
わかりやすい比較表
| 項目 | 特定遺贈 | 包括遺贈 |
|---|---|---|
| 内容 | 特定の財産を渡す | 財産全部・割合を渡す |
| 財産の指定 | 必要 | 不要 |
| 借金の承継 | 原則なし | あり得る |
| 法的立場 | 限定的 | 相続人に近い |
| 放棄期限 | 特に厳格でない | 原則3か月以内 |
| 具体例 | 「自宅を遺贈」 | 「全財産の2分の1を遺贈」 |
実務ではどちらを使うべき?
一般的には「特定遺贈」が多い
実務上は、特定遺贈を利用するケースが比較的多いです。
理由としては、
- 財産内容が明確
- トラブル防止につながる
- 不動産登記手続きが進めやすい
といったメリットがあるためです。
特に司法書士が関与する不動産相続では、特定遺贈が用いられることがよくあります。
包括遺贈は慎重な検討が必要
包括遺贈は便利な反面、
- 借金承継リスク
- 相続人との対立
- 遺産分割協議への影響
など、複雑な問題が発生しやすくなります。
そのため、包括遺贈を検討する場合は、専門家への相談をおすすめします。
遺言書作成時の注意点
自筆証書遺言は不備に注意
自筆証書遺言では、
- 財産表示ミス
- 法律用語の誤用
- 記載漏れ
などが非常に多く見られます。
例えば、「相続させる」と「遺贈する」では法的意味が異なる場合があります。
公正証書遺言がおすすめ
相続トラブル防止の観点からは、公正証書遺言がおすすめです。
公証人が内容を確認するため、
- 法的に有効な遺言を作成しやすい
- 原本が保管される
- 紛失リスクが少ない
というメリットがあります。
司法書士に相談するメリット
相続や遺言は、法律・不動産・戸籍・登記など、多くの専門知識が必要となります。
司法書士に相談することで、
- 適切な遺言内容の提案
- 相続トラブル予防
- 不動産登記対応
- 相続手続き全般のサポート
を受けることができます。
特に不動産が含まれる相続では、相続登記との関係も重要になるため、早めの相談がおすすめです。
まとめ
特定遺贈と包括遺贈は、どちらも遺言によって財産を渡す方法ですが、その法的効果は大きく異なります。
特定遺贈
- 特定の財産を指定する
- 借金を原則承継しない
- 内容が明確でトラブル防止につながる
包括遺贈
- 財産全体や割合を与える
- 借金も承継する可能性がある
- 相続人に近い立場になる
遺言書の内容によって、相続人間の関係や相続手続きの負担は大きく変わります。
「どのような遺言を作成すべきかわからない」
「相続対策を進めたい」
「不動産を含む遺産承継を相談したい」
という方は、相続・遺言に詳しい司法書士へ早めに相談することをおすすめします。
京都で遺言書作成や相続手続きについてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。


