不動産を所有している方の中には、
- 「自宅は長男に相続させたい」
- 「配偶者が安心して住み続けられるようにしたい」
- 「遺産分割でもめないようにしたい」
と考え、遺言書の作成を検討される方が多くいらっしゃいます。
確かに、遺言書は相続トラブルを防ぐために非常に有効な方法です。
しかし、不動産を遺言で相続させる場合には、いくつか重要な注意点があります。
この記事では、司法書士の視点から、不動産を遺言で相続させる際のポイントを分かりやすく解説します。
そもそも「遺言で不動産を相続させる」とは?
遺言書には、
- 「長男○○に自宅不動産を相続させる」
- 「妻○○に京都市○○町の土地建物を遺贈する」
などと記載することで、特定の不動産を特定の人へ承継させることができます。
遺言がない場合、不動産は相続人全員の共有状態となり、遺産分割協議が必要になります。
しかし、遺言があれば、原則として遺言内容に従って相続手続きを進めることができるため、相続人同士の争いを防ぎやすくなります。
注意点① 不動産の表示を正確に記載する
遺言書では、不動産を正確に特定する必要があります。
例えば、
- 「京都市の自宅」
- 「実家の土地」
だけでは、どの不動産なのか不明確になる場合があります。
そのため、登記事項証明書(登記簿)に記載されている内容に基づき、
- 所在
- 地番
- 家屋番号
- 種類
- 構造
などを正確に記載することが重要です。
不動産の表示に誤りがあると、相続登記の際に手続きが止まってしまう可能性があります。
注意点② 「相続させる」と「遺贈する」の違い
遺言書では、「相続させる」と「遺贈する」という表現があります。
相続させる
相続人に対して財産を承継させる表現です。
例
「長男○○に自宅不動産を相続させる」
遺贈する
相続人以外にも財産を渡せる表現です。
例
「長年介護をしてくれた甥○○に土地を遺贈する」
相続人に不動産を承継させる場合は、「相続させる」と記載するのが一般的です。
注意点③ 遺留分への配慮が必要
遺言書があっても、一定の相続人には「遺留分」という最低限の取り分が認められています。
例えば、
- 長男にすべての不動産を相続させる
- 他の子には何も残さない
という内容の場合、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
特に不動産は高額になりやすいため、遺留分トラブルが起こるケースも少なくありません。
そのため、
- 預貯金とのバランスを取る
- 代償金を準備する
- 生前に家族へ説明する
などの対策を検討することが重要です。
注意点④ 不動産を共有名義にする場合は慎重に
「子ども2人に平等に相続させたい」という理由で、不動産を共有名義にする遺言を作成するケースがあります。
しかし、不動産共有には、
- 売却時に全員の同意が必要
- 管理方針でもめやすい
- 次世代で権利関係が複雑化する
などの問題があります。
そのため、実務上は、
- 1人が不動産を取得する
- 他の相続人には預貯金を配分する
など、共有を避ける設計が望ましいケースも多くあります。
注意点⑤ 相続登記が必要になる
遺言書があっても、自動的に名義変更されるわけではありません。
不動産を相続した人は、法務局で「相続登記」を行う必要があります。
2024年4月からは、相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記をしなければならなくなりました。
正確な遺言書を作成しておくことで、相続登記もスムーズに進めやすくなります。
自筆証書遺言は無効リスクに注意
自筆証書遺言は手軽に作成できる一方、
- 日付漏れ
- 押印漏れ
- 内容の不明確さ
- 財産特定ミス
などによって無効になるケースがあります。
また、発見されない・改ざんされるといったリスクもあります。
そのため、不動産を含む相続では、公正証書遺言の活用が特におすすめです。
公正証書遺言のメリット
公正証書遺言には、
- 無効リスクが低い
- 原本が公証役場で保管される
- 検認手続きが不要
- 相続手続きがスムーズ
というメリットがあります。
特に不動産を複数所有している場合や、相続人間で争いの可能性がある場合には、公正証書遺言が有効です。
まとめ
不動産を遺言で相続させる場合には、
- 不動産表示を正確に記載する
- 遺留分へ配慮する
- 共有名義を慎重に検討する
- 相続登記を見据えて作成する
ことが重要です。
遺言書は「書けば安心」ではなく、内容次第で大きなトラブルにつながることもあります。
不動産を含む相続対策をご検討の方は、早めに司法書士へご相談ください。
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