「自分が亡くなったあと、財産の一部を社会のために役立ててほしい」
「母校やお世話になった団体へ寄付したい」
このような思いから、遺言による寄付を検討される方が増えています。
遺言による寄付は「遺贈(いぞう)」と呼ばれ、現金だけでなく、不動産や株式など金銭以外の財産を寄付することも可能です。
もっとも、金銭以外の財産を寄付する場合には、特有の注意点があります。内容によっては、寄付先が受け取りを断るケースや、相続人とのトラブルにつながるケースもあります。
この記事では、遺言による寄付の基本と、金銭以外の財産を寄付する場合の注意点について、司法書士が分かりやすく解説します。
遺言による寄付(遺贈)とは?
遺言によって、自分の財産を特定の個人や団体へ無償で譲ることを「遺贈」といいます。
遺贈の相手は、相続人である必要はありません。
例えば、以下のような寄付が可能です。
- 公益法人への寄付
- NPO法人への寄付
- 学校法人への寄付
- 地域団体・宗教法人への寄付
- お世話になった知人への財産承継
近年では、社会貢献や終活の一環として、遺言による寄付を希望される方が増えています。
金銭以外の財産も寄付できる
遺言による寄付は、現金だけに限りません。
例えば、次のような財産も対象になります。
不動産
- 自宅
- 土地
- 賃貸マンション
- 農地
有価証券
- 株式
- 投資信託
- 国債
動産
- 車
- 貴金属
- 美術品
- 骨董品
その他
- 知的財産権
- 会員権
- デジタル資産
ただし、金銭以外の財産は「そのまま受け取ればよい」というわけではなく、管理・換価・税務などの問題が生じることがあります。
金銭以外を寄付する場合の主な注意点
① 寄付先が受け取りを断る場合がある
現金と違い、不動産や物品には管理負担があります。
例えば、次のようなケースです。
- 老朽化した空き家
- 管理費がかかるマンション
- 売却しにくい地方土地
- 維持費の高い別荘
寄付先の団体にとっては、受け取ったあとに固定資産税や管理費が発生するため、不要な負担になることがあります。
そのため、事前に寄付先へ相談しておくことが非常に重要です。
「遺言に書けば必ず受け取ってもらえる」とは限りません。
② 不動産は名義変更手続きが必要
不動産を寄付する場合、遺言だけで完結するわけではありません。
亡くなった後には、法務局で所有権移転登記(名義変更)が必要になります。
また、寄付先が法人の場合でも、
- 登録免許税
- 必要書類の収集
- 固定資産評価証明書の取得
などの手続きが必要になります。
手続きを円滑に進めるためには、遺言執行者を指定しておくことが重要です。
③ 相続人とのトラブルに注意
遺言による寄付が多額になると、相続人との間でトラブルになる場合があります。
特に問題となりやすいのが「遺留分」です。
遺留分とは?
一定の相続人には、法律上最低限保障された取り分があります。
例えば、
- 配偶者
- 子
- 直系尊属
などには遺留分があります。
そのため、財産の大半を第三者へ寄付してしまうと、相続人から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります。
寄付の意思を実現するためにも、
- 相続人への配慮
- 生前の説明
- 財産配分の調整
などを検討することが大切です。
④ 寄付先の正式名称を正確に記載する
遺言書では、寄付先を正確に記載する必要があります。
例えば、
- 法人名の誤記
- 支部名だけの記載
- 略称のみの記載
などがあると、受取人が特定できず、トラブルになる可能性があります。
特に法人は、
- 正式名称
- 所在地
- 法人番号
などを事前に確認しておくと安心です。
⑤ 売却して現金化してから寄付する方法もある
不動産などをそのまま寄付すると、寄付先の負担が大きくなる場合があります。
そのため、
「不動産を売却し、その売却代金を寄付する」
という方法を選ぶケースもあります。
この場合は、
- 誰が売却を行うのか
- 売却時期
- 売却できなかった場合
などを遺言で具体的に定めておくことが重要です。
遺言執行者を指定しておくことが重要
寄付を伴う遺言では、遺言執行者の指定が特に重要です。
遺言執行者とは、遺言内容を実際に実現する人のことです。
例えば、
- 寄付先との連絡
- 不動産の名義変更
- 財産の換価
- 金銭の引渡し
などを行います。
遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力が必要になることもあり、手続きが進まないケースがあります。
そのため、専門家を遺言執行者に指定することも多くあります。
まとめ
遺言によって寄付を行うことは可能であり、現金以外の財産も寄付の対象にできます。
しかし、不動産や株式など金銭以外の財産には、
- 管理負担
- 名義変更手続き
- 税務上の問題
- 相続人との関係
など、多くの注意点があります。
特に、
「寄付先が本当に受け取れる財産か」
「相続人とのトラブルにならないか」
という点を十分に検討することが大切です。
遺言による寄付を確実に実現するためには、事前に専門家へ相談し、内容を整理したうえで適切な遺言書を作成することをおすすめします。

