「子どもに自宅を渡しておきたい」
「相続トラブルを防ぐために、生前のうちに名義変更したい」
このような理由から、不動産の生前贈与を検討される方は少なくありません。
しかし、不動産の生前贈与には税金や法律上の注意点が多く、安易に手続きを進めると、かえって大きな負担が生じることがあります。
この記事では、不動産を生前贈与する際に注意すべきポイントを、司法書士が分かりやすく解説します。
生前贈与とは?
生前贈与とは、亡くなる前に財産を家族などへ無償で譲ることをいいます。
不動産の生前贈与では、土地や建物の所有権を、親から子へ変更するケースが一般的です。
相続が発生する前に財産を移転できるため、以下のような目的で利用されます。
- 相続対策
- 相続人同士の争い防止
- 特定の子へ不動産を承継したい
- 認知症対策
- 事業承継対策
ただし、相続とは異なり、税金や費用が高額になる場合もあるため注意が必要です。
注意点① 贈与税が発生する可能性がある
生前贈与で最も注意すべきなのが「贈与税」です。
贈与を受けた人には、年間110万円を超える部分について贈与税がかかる可能性があります。
不動産は高額になることが多いため、多額の贈与税が発生するケースも珍しくありません。
たとえば、評価額2,000万円の不動産を子どもへ贈与した場合、特例を利用しなければ高額な贈与税が発生する可能性があります。
そのため、次のような制度を活用できるか事前確認が重要です。
相続時精算課税制度
一定の条件を満たす親子間の贈与について、2,500万円まで贈与税を繰り延べできる制度です。
ただし、将来的に相続財産へ持ち戻して計算されるため、「節税になる」とは限りません。
制度選択後は原則として暦年課税へ戻れないため、慎重な判断が必要です。
配偶者への居住用不動産贈与の特例
婚姻後20年経過した夫婦間で、居住用不動産又は取得資金の贈与があった場合、贈与税の課税価格から、2,000万円まで控除ができる特例
国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm
注意点② 不動産取得税・登録免許税がかかる
不動産を生前贈与すると、贈与税以外にも次の費用が発生します。
登録免許税
名義変更登記の際にかかる税金です。
相続による名義変更よりも、生前贈与のほうが税率は高く設定されています。
不動産取得税
不動産を取得した人に課税される地方税です。
相続では課税対象外ですが、生前贈与では課税対象となります。
「相続より先に名義変更したほうが得」と思っていても、結果的に税負担が増えるケースもあるため、慎重な比較検討が重要です。
注意点③ 将来の相続でトラブルになることがある
特定の相続人だけに不動産を贈与すると、他の相続人との間で不公平感が生じることがあります。
特に問題となりやすいのが「特別受益」です。
特別受益とは?
生前に特定の相続人だけが多額の利益を受けていた場合、その分を相続時に考慮する制度です。
たとえば、
- 長男だけに自宅を贈与した
- 一人の子に多額の援助をした
といった場合、遺産分割でもめる原因になることがあります。
事前に家族間で十分話し合いを行い、必要に応じて遺言書も作成しておくことが大切です。
注意点④ 住宅ローンが残っている場合は要注意
住宅ローンが残っている不動産は、自由に贈与できない場合があります。
金融機関の承諾なく名義変更すると、契約違反になる可能性があります。
また、ローン付き不動産を贈与する場合、
- 債務引受
- みなし贈与
- 所得税
など複雑な問題が発生することもあります。
住宅ローンがある不動産については、事前に金融機関や専門家へ相談することをおすすめします。
注意点⑤ 認知症になると手続きできない可能性がある
不動産の贈与契約には「意思能力」が必要です。
認知症が進行すると、有効な贈与契約ができなくなる可能性があります。
その結果、
- 名義変更できない
- 不動産売却できない
- 成年後見制度が必要になる
など、手続きが大きく制限されることがあります。
将来の財産管理に不安がある場合は、早めの対策が重要です。
生前贈与と相続、どちらがよい?
ケースによって最適な方法は異なります。
生前贈与が向いているケース
- 確実に特定の人へ不動産を渡したい
- 認知症対策をしたい
- 将来の相続トラブルを予防したい
- 収益不動産を早めに承継したい
相続のほうが有利なケース
- 税金負担を抑えたい
- 急いで名義変更する必要がない
- 配偶者居住権や相続税特例を活用したい
状況によっては、生前贈与よりも遺言書作成のほうが適している場合もあります。
まとめ
不動産の生前贈与には、
- 贈与税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 相続トラブル
- 認知症リスク
など、多くの注意点があります。
「とりあえず名義変更しておこう」と進めてしまうと、後から大きな問題になることもあります。
不動産の生前贈与は、税務・法律・相続対策を総合的に考えることが重要です。
当事務所では、生前贈与による不動産名義変更、相続対策、遺言書作成のご相談を承っております。
お気軽にご相談ください。

