はじめに

相続や高齢者の財産管理の相談を受けていると、「介護認定を受けている親は税金の控除を受けられますか?」という質問をいただくことがあります。

その際によく関係する制度が「障害者控除対象者認定書」です。

これは、身体障害者手帳や療育手帳を持っていない高齢者であっても、一定の要件を満たせば税法上の障害者控除を受けられる可能性がある制度です。

特に、

  • 認知症の方
  • 要介護認定を受けている方
  • 寝たきり状態の高齢者
  • 成年後見制度を利用している方

などは、対象となる可能性があります。

しかし、この制度は自動的に適用されるわけではなく、市区町村への申請が必要です。また、「介護認定=必ず控除対象」ではないため注意が必要です。

この記事では、障害者控除対象者認定書の制度内容、申請方法、対象となるケース、相続との関係、司法書士へ相談するメリットなどについて、京都の司法書士がわかりやすく解説します。


障害者控除対象者認定書とは?

税法上の「障害者控除」を受けるための認定制度

障害者控除対象者認定書とは、市区町村が発行する証明書であり、所得税や住民税の障害者控除を受けるために利用されます。

通常、障害者控除を受けるには、

  • 身体障害者手帳
  • 療育手帳
  • 精神障害者保健福祉手帳

などが必要になります。

しかし、高齢者の場合、実際には介護が必要な状態であっても、障害者手帳を取得していないケースが少なくありません。

そのため、一定の状態にある高齢者について、市区町村長が「税法上の障害者に準ずる」と認定する制度が設けられています。

この認定を受けることで、手帳がなくても障害者控除を受けられる可能性があります。


障害者控除とは?

所得税・住民税の負担を軽減できる制度

障害者控除とは、障害のある方やその扶養者の税負担を軽減する制度です。

対象となると、所得控除を受けることができ、所得税・住民税が軽減されます。

控除額の例

一般障害者

  • 所得税:27万円
  • 住民税:26万円

特別障害者

  • 所得税:40万円
  • 住民税:30万円

同居特別障害者

  • 所得税:75万円
  • 住民税:53万円

認知症や寝たきり状態が重い場合、「特別障害者」と認定されることもあります。


どのような人が対象になる?

65歳以上で、介護保険の認定資料や主治医意見書などから、寝たきり状態、重度の認知症、身体障害者や知的障害者に準ずる状態と判断される人

例えば、

  • 認知症が進行している
  • 常時介護が必要
  • 寝たきり状態
  • 日常生活に大きな支障がある

などの場合、対象となる可能性があります。

ただし、単に「要介護認定を受けている」というだけでは足りません。

市区町村は、

  • 主治医意見書
  • 認定調査票
  • 要介護度
  • 認知症の程度
  • 日常生活自立度

などを総合的に確認して判断します。

要介護認定を受けていなくても障害者控除対象者認定書を取得できる場合があります。 ただし、自治体によって取扱いが異なります。

一般的には、障害者控除対象者認定書は介護保険の要介護認定資料をもとに判定されるため、要介護認定を受けていることが前提となっている自治体が多いです。例えば京都市では、65歳以上で介護保険の要介護認定を受けている方が対象とされています。

一方で、要介護認定を受けていない方についても、

  • 医師の診断書
  • 寝たきりや認知症の状態を示す資料

などを提出することで認定申請を認めている自治体もあります。東京都羽村市では、要介護認定を受けていない方でも指定の診断書を提出することで認定書の発行を受けられる制度があります。

 


要介護何級なら対象になる?

一律の基準はない

よくある質問として、

「要介護3なら対象?」
「要介護1でも可能?」

というものがあります。

しかし、全国共通の一律基準はありません。

市区町村によって基準が異なるため、実際には自治体ごとの運用確認が必要です。

一般的には、

  • 要介護1〜2 → 認定されないことも多い
  • 要介護3以上 → 対象可能性が高まる
  • 要介護4〜5 → 特別障害者認定の可能性もある

という傾向があります。

また、認知症の程度が重い場合には、要介護度が比較的低くても認定されることがあります。


認定書はいつ使う?

確定申告や年末調整で利用

障害者控除対象者認定書は、主に以下の場面で利用されます。

1.本人の確定申告

本人が所得税申告をする際に利用します。


2.扶養家族の年末調整

高齢の親を扶養している家族が、年末調整で障害者控除を利用できます。


3.相続税申告

相続税でも障害者控除が関係することがあります。

特に相続人本人が障害者である場合には、相続税の障害者控除制度が利用できます。


認定書の申請方法

市区町村へ申請する

障害者控除対象者認定書は、市区町村役場で申請します。

一般的な必要書類

  • 申請書
  • 本人確認書類
  • 介護保険被保険者証
  • マイナンバー関連書類
  • 委任状(代理人申請の場合)

自治体によって異なるため、事前確認が重要です。


申請から発行までの期間

数日〜数週間かかることも

申請後、市区町村が介護認定資料などを確認して判定を行います。

そのため、通常は即日発行できません。

特に年末調整や確定申告時期は窓口が混雑しやすいため、早めの準備が重要です。


過去分をさかのぼって申請できる?

可能な場合がある

過去分について認定書を発行可能です。

例えば、

  • 過去の確定申告を修正したい
  • 還付申告をしたい
  • 数年前から認知症だった

などの場合です。

ただし、介護認定資料の保存期間などの関係で、対応できないケースもあります。

また、税金の還付には期限があります。


成年後見制度との関係

成年後見利用者も対象となることがある

成年後見制度を利用している方は、認知症などにより判断能力が低下しているケースが多いため、障害者控除対象者認定の対象になることが多いです。

成年後見人が本人に代わって申請することも可能です。

司法書士が成年後見人に就任しているケースでは、

  • 認定書取得
  • 税理士との連携
  • 必要書類収集

などをサポートすることがあります。


相続との関係

被相続人の準確定申告で利用できるケース

亡くなった方についても、死亡年分の準確定申告で障害者控除を利用できる場合があります。

例えば、

  • 生前に認知症だった
  • 要介護認定を受けていた
  • 寝たきり状態だった

などの場合です。

相続人が後から制度を知るケースも少なくありません。

そのため、相続手続きの中で、

「障害者控除対象者認定の可能性がないか」

を確認することが重要です。


認知症と障害者控除対象者認定

手帳がなくても対象になる可能性

認知症の方は、精神障害者保健福祉手帳を取得していないことも多いですが、障害者控除対象者認定によって税控除を受けられる可能性があります。

特に、

  • アルツハイマー型認知症
  • レビー小体型認知症
  • 血管性認知症

などで日常生活への支障が大きい場合は対象可能性があります。


よくある誤解

「介護認定=自動的に障害者控除」ではない

非常に多い誤解ですが、要介護認定を受けていても、自動的に障害者控除が適用されるわけではありません。

必ず市区町村への申請と認定が必要です。


「障害者手帳がないから無理」でもない

逆に、

「障害者手帳がないから対象外」

と思われている方も多いですが、実際には認定制度によって対象になるケースが多くあります。


司法書士へ相談するメリット

相続・後見周辺をまとめて確認できる

障害者控除対象者認定書は、単なる税金の問題だけでなく、

  • 成年後見
  • 相続
  • 生前対策
  • 家族信託
  • 財産管理

などとも関係することがあります。

司法書士へ相談することで、

  • 成年後見申立て
  • 相続手続き
  • 不動産名義変更
  • 認知症対策
  • 必要書類収集

などを総合的に進めやすくなります。

また、税務申告が必要な場合には、税理士と連携しながらサポートできるケースもあります。


京都では高齢化が進み、

  • 認知症対策
  • 成年後見制度
  • 相続手続き

に関する相談が増えています。

その中で、障害者控除対象者認定制度は、見落とされやすい制度の一つです。

「対象になるかわからない」
「亡くなった親でも申請できる?」
「相続手続きと一緒に相談したい」

このようなお悩みがある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。


まとめ

障害者控除対象者認定書は、高齢者や認知症の方の税負担軽減につながる重要な制度です。

特に、

  • 要介護認定を受けている方
  • 認知症の方
  • 成年後見制度利用者
  • 寝たきり状態の方

などは対象になる可能性があります。

ただし、

  • 自動適用ではない
  • 市区町村への申請が必要
  • 自治体ごとに基準が異なる

などの注意点もあります。

また、相続や成年後見と関係するケースも多いため、制度を正しく理解することが重要です。

京都で、

  • 障害者控除対象者認定書
  • 成年後見制度
  • 相続手続き
  • 認知症対策

についてお悩みの方は、司法書士へお気軽にご相談ください。

 

参考

国税庁 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について

京都市 障害者控除対象者認定書の発行について