相続が発生した際、「亡くなった方がどこの銀行に口座を持っていたかわからない」「預貯金を調べたいが手続き方法がわからない」とお困りになる方は少なくありません。
そのような場合に利用できる制度が、「相続時預貯金口座照会制度」です。
この制度を利用することで、亡くなった方(被相続人)がどの金融機関に預貯金口座を保有していたかを確認できる場合があります。
生前に『マイナンバーと金融機関口座を紐づけ(付番)』➡相続発生後に『付番済み口座について、一括で所在照会』という流れです。
(※「口座管理法(預貯金口座付番制度)」については、別コラムで解説)
特に、相続人同士で情報共有が十分にできていないケースや、被相続人が生前に財産状況を明らかにしていなかったケースでは、非常に重要な制度です。
この記事では、相続時預貯金口座照会制度について、制度の概要、利用できる人、必要書類、手続きの流れ、メリット・注意点などを、司法書士の視点からわかりやすく解説します。
相続時預貯金口座照会制度とは?
相続時預貯金口座照会制度とは、相続人等が金融機関に対して、亡くなった方の預貯金口座の有無を照会できる制度です。
従来、相続人が亡くなった方の口座を調べるためには、
- 通帳を探す
- キャッシュカードを確認する
- 郵便物を調べる
- 一つずつ銀行へ問い合わせる
といった方法しかなく、多大な時間と労力が必要でした。
しかし近年、多くの金融機関で、相続人からの照会請求に応じて、
- 当該金融機関に口座が存在するか
- 支店情報
- 口座種別
などを確認できる制度が整備されています。
相続財産調査を進めるうえで、非常に重要な制度といえるでしょう。
なぜ相続時預貯金口座照会制度が必要なのか
相続財産の把握は義務に近い重要事項
相続手続きを行うためには、まず相続財産を正確に把握する必要があります。
特に預貯金は、
- 遺産分割協議
- 相続税申告
- 相続放棄の判断
など、多くの場面で重要となります。
もし預貯金の存在を見落とした場合、
- 遺産分割のやり直し
- 相続税申告漏れ
- 他の相続人とのトラブル
につながる可能性があります。
そのため、相続開始後は、できる限り正確な財産調査を行うことが大切です。
相続時預貯金口座照会制度を利用できる人
以下の方が利用できます。
1. 相続人(包括受遺者を含む) 法定相続人など
2. 遺言執行者 遺言書により指定された遺言執行者
3. 成年後見人等 相続人に成年後見人が付いている場合には、成年後見人
4. 司法書士などの専門家 相続人から正式な委任を受けた司法書士などの代理人
相続時預貯金口座照会制度の利用方法
1. 金融機関へ申請(相続時預貯金口座照会の依頼)
金融機関へ必要書類を揃えて申請します。
一般的に必要となる書類は以下のとおりです。
・被相続人の死亡がわかる戸籍謄本
・相続人の戸籍謄本
・本人確認書類
・照会請求書(各金融機関所定の書式がありますので、申請される予定の金融機関にお問合せください。)
・委任状(司法書士など代理人が申請する場合に必要です。)
2. 預金保険機構(DICJ)が付番情報にもとづき照会手続を進める
3. 照会結果が郵送で届く
相続時預貯金口座照会制度のメリット
1. 相続財産の漏れ防止
最大のメリットは、預貯金の見落としを防げる点です。
被相続人が複数の金融機関を利用していた場合でも、調査を進めやすくなります。
2. 相続人間トラブルの防止
財産状況が不明確なまま遺産分割を行うと、
- 「隠し口座があるのでは?」
- 「一部の相続人だけが把握していた」
などの疑念が生じることがあります。
口座照会を行うことで、透明性の高い相続手続きにつながります。
3. 相続税申告漏れ防止
相続税申告では、預貯金も重要な課税対象です。
申告漏れがあると、
- 延滞税
- 加算税
などのリスクがあります。
事前に正確な財産調査を行うことが重要です。
相続時預貯金口座照会制度の注意点
1. マイナンバーが付番された口座のみ対象。全部の口座が発見されるという保証がない。
相続時口座照会で対象になるのは、被相続人のマイナンバーが登録(付番)されている口座です。
また、対象外となる金融機関(特定金融機関等)もあります。
2. 手数料がかかる
相続時口座照会の手数料は、1件あたり5,060円(税込)です。
そして重要なのが、口座が見つからない場合でも返金されない(申込受付後は返却不可等の取扱い)という点です。
3. 口座凍結後は自由に引き出せない
金融機関が死亡を把握すると、通常は口座が凍結されます。
凍結後は、原則として相続手続き完了まで自由に預金を引き出せません。
(※一定条件のもとで「仮払い制度」を利用できる場合があります。)
4.「死亡から10年以内」という期限がある
照会できる情報には期間制限があり、死亡後10年以内が原則とされています。
相続時預貯金口座照会制度と相続放棄
相続放棄を検討している場合でも、財産調査は非常に重要です。
なぜなら、
- 預貯金より借金が多い
- 借入状況が不明
- 相続財産の全体像がわからない
といったケースでは、財産状況を確認したうえで相続放棄するか判断する必要があるからです。
相続放棄には原則3か月という期限があります。
そのため、早めの財産調査が重要となります。
まとめ
相続時預貯金口座照会制度は、亡くなった方の預貯金口座を調査するうえで重要な制度です。
相続では、
- 預貯金の把握
- 相続税対策
- 相続人間トラブル防止
- 適切な遺産分割
のために、正確な財産調査が欠かせません。
一方で、
- 必要書類が多い
- 金融機関ごとに手続きが異なる
- 戸籍収集が大変
など、負担が大きい場面もあります。
相続手続きに不安がある場合は、司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。
参考リンク
不動リーガルオフィスでは、相談のご予約受付中です。
土日祝も相談可能
京都市内は出張料無料
お気軽にご相談ください。


