はじめに
相続が発生した際、遺産の中に不動産が含まれているケースは非常に多くあります。特に問題になりやすいのが、「相続した不動産に誰かが住んでいる場合」です。
たとえば、
- 被相続人(亡くなった方)と同居していた親族がそのまま住んでいる
- 相続人の一人が実家に住み続けている
- 賃貸している不動産に借主がいる
- 内縁の配偶者が居住している
- 相続人ではない親族が住んでいる
など、さまざまなケースがあります。
不動産に居住者がいる場合、単純に「不動産を相続したから自由に処分できる」というわけではありません。居住者との関係性や権利関係によっては、売却や明渡しが難しくなったり、相続人同士のトラブルに発展したりすることがあります。
この記事では、相続した不動産に住んでいる人がいる場合の注意点について、司法書士の視点からわかりやすく解説します。
相続した不動産に住んでいる人がいると何が問題になるのか
不動産を自由に売却・活用できない
相続した不動産に誰かが住んでいる場合、たとえ名義を相続人に変更したとしても、すぐに売却できるとは限りません。
特に以下のようなケースでは注意が必要です。
- 同居していた親族が引き続き居住している
- 長年住み続けている相続人がいる
- 賃貸借契約が存在する
- 使用貸借(無償で住ませていた)がある
居住している人の権利関係を整理せずに売却を進めると、買主が見つかりにくくなることもあります。
ケース別に見る注意点
1.相続人の一人が住んでいるケース
最も多いトラブルの一つ
相続で特に多いのが、兄弟姉妹のうち一人が実家に住み続けているケースです。
例えば、
- 長男が親と同居していた
- 親の介護をしていた子がそのまま住んでいる
- 他の相続人は別居している
という状況です。
この場合、不動産をどう分けるかで意見が対立しやすくなります。
「住み続けたい」と「売却したい」の対立
住んでいる相続人は、
- 今後も住み続けたい
- 生活基盤を失いたくない
と考えることが多い一方、他の相続人は、
- 不動産を売却して現金化したい
- 相続分を公平に受け取りたい
と考えることがあります。
この意見の違いが、遺産分割協議の長期化につながることがあります。
住んでいるだけでは所有権は取得できない
よくある誤解として、
「長年住んでいるから自分のもの」
という考えがあります。
しかし、実際には、住んでいるだけで所有権を取得できるわけではありません。
相続不動産は、遺産分割が終わるまでは相続人全員の共有状態になります。
つまり、住んでいる相続人だけの判断で、
- 売却
- 建替え
- 担保設定
などを行うことはできません。
2.被相続人と同居していた配偶者が住んでいるケース
配偶者の居住権に配慮が必要
亡くなった方の配偶者が引き続き住んでいる場合には、法律上も一定の保護があります。
特に重要なのが、
- 配偶者短期居住権
- 配偶者居住権
です。
配偶者短期居住権とは
被相続人と同居していた配偶者は、原則として最低6か月間は無償で住み続けることができます。
これは民法で保護されている権利です。
したがって、
「すぐに出て行ってほしい」
という要求は認められない可能性があります。
配偶者居住権とは
2020年の民法改正により創設された制度です。
配偶者居住権を設定すると、配偶者は自宅に住み続けながら、所有権は別の相続人が取得できます。
例えば、
- 妻は住み続ける
- 子どもが所有権を取得する
という形が可能になります。
高齢の配偶者の生活を守るために重要な制度ですが、設定には適切な遺産分割や登記が必要です。
3.賃借人(借主)が住んでいるケース
オーナーチェンジになる
アパートや貸家など、賃貸している不動産を相続した場合、相続人は賃貸人の地位を引き継ぎます。
つまり、
- 家賃を受け取る権利
- 修繕義務
- 敷金返還義務
なども相続されます。
勝手に退去させることはできない
借主には借地借家法による強い保護があります。
そのため、
「相続したから出て行ってほしい」
という理由だけでは明渡しを求めることは困難です。
特に京都市内では古い賃貸物件も多く、契約内容が曖昧なケースもあります。
まずは、
- 賃貸借契約書
- 更新履歴
- 家賃の支払い状況
などを確認することが重要です。
4.相続人ではない親族が住んでいるケース
使用貸借の問題
例えば、
- 孫
- 親族
- 知人
などが無償で住んでいるケースがあります。
この場合、「使用貸借」という法律関係になります。
明渡しトラブルになることも
口約束だけで住んでいた場合、
- いつまで住めるのか
- 無償なのか
- 退去条件はどうなるのか
が曖昧なままになっていることがあります。
結果として、
「出て行きたくない」
「話が違う」
というトラブルになることも少なくありません。
遺産分割前に注意すべきこと
勝手に名義変更や売却をしない
遺産分割が終わっていない段階では、不動産は共有状態です。
相続人の一人だけで勝手に、
- 名義変更
- 売却
- 解体
などを進めることはできません。
固定資産税の負担者を決める
相続不動産を誰が管理するのか決まっていないと、
- 固定資産税
- 修繕費
- 管理費
などの負担でもめることがあります。
特に空き家ではなく誰かが住んでいる場合には、管理責任が曖昧になりやすいため注意が必要です。
相続登記を放置するリスク
2024年から相続登記が義務化
相続登記は現在、義務化されています。
相続によって不動産を取得したことを知ってから3年以内に登記申請をしなければならず、正当な理由なく放置すると過料の対象になる可能性があります。
居住者がいるとさらに複雑化する
住んでいる人がいる不動産は、
- 誰が管理するのか
- 誰が住み続けるのか
- 売却するのか
などが決まらず、登記が放置されやすい傾向があります。
しかし、放置すると、
- 相続人がさらに増える
- 話し合いが困難になる
- 不動産の処分ができなくなる
など問題が深刻化します。
売却を考える場合の注意点
居住者がいると売却価格に影響する
不動産に居住者がいる状態では、
- 買主が限定される
- 明渡しリスクがある
- 自由に利用できない
などの理由から、売却価格が下がります。
事前に権利関係を整理する
売却前には、
- 誰が住んでいるのか
- 契約関係はあるのか
- 明渡し可能か
- 遺産分割は成立しているか
を整理しておくことが重要です。
司法書士だけでなく、必要に応じて弁護士や不動産会社とも連携しながら進めることが望ましいでしょう。
京都で多い相続不動産の特徴
古い家屋・長屋が多い
京都では、
- 長屋
- 築年数の古い住宅
- 未登記建物
- 接道問題のある物件
などが少なくありません。
さらに、
「親族が長年住み続けている」
ケースも多く、権利関係が複雑化していることがあります。
空き家化を防ぐためにも早めの対応を
居住者がいる間は問題が見えにくくても、
- 退去後に空き家になる
- 建物が老朽化する
- 管理が困難になる
ケースがあります。
京都市では空き家対策も進められており、管理不全空家に指定されるリスクもあるため注意が必要です。
トラブルを防ぐためのポイント
1.早めに相続人全員で話し合う
「誰が住むのか」
「誰が取得するのか」
「売却するのか」
を早期に整理することが重要です。
2.口約束にしない
居住継続について合意する場合でも、
- 使用条件
- 費用負担
- 退去条件
などを書面化しておくとトラブル防止につながります。
3.専門家に相談する
相続不動産に居住者がいる場合は、
- 相続
- 不動産
- 居住権
- 登記
など複数の法律問題が関係します。
状況によっては、
- 司法書士
- 弁護士
- 税理士
- 不動産会社
との連携が必要になることもあります。
司法書士に相談するメリット
司法書士は、
- 相続登記
- 遺産分割協議書作成支援
- 戸籍収集
- 不動産名義変更
- 生前対策
などをサポートできます。
特に、
「住んでいる人がいて話がまとまらない」
「名義変更をどう進めればよいかわからない」
「配偶者居住権を検討したい」
といったケースでは、早めの相談が重要です。
まとめ
相続した不動産に住んでいる人がいる場合、
- 居住者の権利
- 相続人間の公平性
- 売却や管理の問題
など、多くの注意点があります。
特に、
- 相続人が住んでいる
- 配偶者が住んでいる
- 賃借人がいる
- 無償で住んでいる親族がいる
ケースでは、法律関係を正確に整理する必要があります。
また、相続登記の義務化により、「あとで考えよう」と放置するリスクも高まっています。
相続不動産の問題は、早期対応が何より重要です。
京都で相続不動産の名義変更や、居住者のいる不動産の相続でお困りの方は、司法書士へ早めに相談することをおすすめします。


