不動産を兄弟姉妹や親族など複数人で所有している「共有名義」の状態は、最初は問題がなくても、時間が経過するにつれてトラブルにつながることがあります。
「共有している土地を売却したいが、他の共有者が反対している」「相続で兄弟3人の共有になったが、誰も使っていない」「親の代から共有状態が続き、相続によって共有者が増えてしまった」といった相談は多いです。
共有不動産は、単独所有の不動産と比べて売却や管理について共有者との調整が必要になるため、共有関係を長期間放置すると問題が複雑になりやすい特徴があります。
そこで今回は、共有名義不動産を解消する代表的な5つの方法について、売却、共有持分の売買、共有物分割などの違いを整理しながら解説します。
また、少し専門的ですが重要な制度として、「通常の共有」と「遺産共有」が同じ不動産について併存している場合に、相続開始から10年が経過するなど一定の条件を満たせば、共有物分割手続の中で遺産共有関係についても一定範囲で解消できる制度についても説明します。
共有名義不動産とは
共有名義不動産とは、一つの不動産を複数人が持分を持って所有している状態をいいます。
例えば、兄Aが2分の1、弟Bが2分の1というように、一つの土地や建物について複数の所有者が登記されている状態です。
相続では、遺産分割を十分に行わず、「とりあえず兄弟で共有にしておこう」として不動産を共有名義にするケースがあります。
共有状態そのものが悪いわけではありません。
しかし、共有者それぞれの生活環境や経済状況、家族構成が変わると、「売りたい人」と「残したい人」、「利用したい人」と「利用しない人」に意見が分かれることがあります。
さらに共有者が死亡すると、その持分について相続が発生し、共有者がさらに増えることもあります。
そのため、不動産を共有名義にした場合には、将来どのように共有関係を解消するのかについても考えておくことが重要です。
共有名義を放置すると起こりやすい問題
共有名義不動産では、売却する場合には、他の共有者との合意が必要となります。
共有者同士の関係が良好な間は問題にならなくても、一人が死亡して次の世代へ相続されると、それまで面識のなかった親族同士が共有者になることもあります。
例えば、兄弟2人で所有していた土地について、それぞれに子が3人いれば、相続を繰り返すことで共有者が6人になります。
さらに次の相続が発生すれば、共有者はさらに増えていきます。
共有者が増えるほど、不動産の売却や利用について全員の意見をまとめることは難しくなります。
そのため、将来的に単独所有にしたい、売却したいなどの希望がある場合には、早めに共有関係の解消を検討することが大切です。
共有名義不動産を解消する5つの方法
共有名義不動産を解消する方法は、主に次の5つに分けて考えることができます。
1.共有者全員で不動産全体を売却する
最も分かりやすい方法が、共有者全員が合意して不動産を第三者へ売却する方法です。
例えば、兄Aと弟Bが土地を2分の1ずつ共有している場合、AとBがともに売却に同意し、土地全体を買主へ売却します。
売却代金については、原則としてそれぞれの持分に応じて取得することになります。
不動産そのものを処分して現金化できるため、「今後誰も利用する予定がない」「固定資産税や管理の負担をなくしたい」というケースでは有力な方法です。
ただし、不動産全体を売却するためには、基本的に共有者全員の協力が必要です。
一人でも売却に反対する共有者がいる場合には、この方法だけでは共有関係を解消することができません。
2.自分の共有持分を他の共有者に売却する
共有者の一人が、自分の持分を他の共有者に売却する方法もあります。
例えば、兄Aと弟Bが2分の1ずつ共有している土地について、Aが自分の2分の1の持分をBへ売却すれば、Bが土地全体を所有することになります。
不動産を今後利用したい共有者がいる場合には、比較的利用しやすい方法です。
ただし、「持分をいくらで売却するのか」という価格について共有者間で合意する必要があります。
不動産全体の市場価格を単純に持分割合で割った金額が、そのまま共有持分の売買価格になるとは限りません。
税務上の問題が生じる場合もあるため、親族間で著しく低い価格による売買を行う場合などには税理士などへの確認も検討した方がよいでしょう。
3.他の共有者の持分を買い取る
反対に、自分が不動産を利用したい場合には、他の共有者の持分を買い取って単独所有にする方法があります。
例えば、相続した実家について長男がそのまま居住したい場合、他の兄弟が持っている共有持分を長男が買い取ることで、長男の単独所有とすることができます。
単独所有になれば、将来の売却や建替えなどについて他の共有者の同意を求める必要がなくなります。
もっとも、持分を買い取るためには相応の資金が必要です。
不動産の価値が高い場合には、一括して買い取ることが難しいケースもありますので、資金面を含めて検討する必要があります。
4.共有者同士の協議によって共有物を分割する
土地などの場合には、共有者同士で話し合い、共有物そのものを分ける方法もあります。
例えば、一筆の土地をAとBが2分の1ずつ共有している場合に、土地を二つに分筆し、それぞれをA、Bの単独所有にする方法です。
これを「現物分割」と呼びます。
ただし、土地の形状や接道状況、面積、建築上の制限などによっては、単純に二つに分けることが適切でない場合があります。
また、土地の一部分ごとに価値が異なる場合には、単純に面積を半分にしただけでは公平にならないこともあります。
そのため、土地家屋調査士による分筆手続、不動産業者や不動産鑑定士による価格確認などが必要になります。
共有者全員が納得できるのであれば、裁判を行わずに共有関係を解消できるため、まずは協議による解決を検討することが一般的です。
5.共有物分割請求によって共有を解消する
共有者同士で話し合っても解決できない場合には、「共有物分割請求」を検討することになります。
民法では、原則として共有者はいつでも共有物の分割を請求することができます。
共有物分割について協議がまとまらない場合には、裁判所に共有物分割を請求することができます。
裁判による共有物分割では、主に次のような方法が問題になります。
現物分割
土地などを物理的に分け、それぞれの共有者が単独所有する方法です。
賠償分割(全面的価格賠償)
共有者の一人が不動産を取得し、他の共有者に持分相当額の金銭を支払う方法です。
競売による分割
現物分割などが困難な場合に、不動産を競売し、その代金を共有者間で分ける方法です。
現在の民法258条では、裁判所が現物分割のほか、共有者に金銭の支払義務を負わせて他の共有者の持分を取得させる方法を命じることができ、これらによる分割ができない場合などには競売を命じることができるとされています。
共有物分割訴訟になれば、不動産の評価、共有者の利用状況、取得希望、支払能力など、さまざまな事情が問題となる可能性があります。
「通常共有」と「遺産共有」は同じ共有でも性質が違う
ここで注意したいのが、「通常共有」と「遺産共有」の違いです。
例えば、AとBが土地をそれぞれ2分の1ずつ所有していたとします。
その後Bが死亡し、Bの相続人が子CとDだった場合を考えてみましょう。
この土地については、
A:通常共有持分2分の1
C・D:Bの2分の1の持分について遺産共有
という状態になります。
AとBの間に存在していた共有関係は通常の共有ですが、Bが死亡したことによりBの持分は相続財産となり、遺産分割が終わるまでCとDの間では遺産共有の状態になります。
つまり、一つの不動産の中に「通常共有」と「遺産共有」が同時に存在することになります。
法務省も、このようなケースを「遺産共有と通常共有が併存している場合」として説明しています。
「遺産分割」と「共有物分割」は別の手続
通常共有と遺産共有が併存している場合、両者を同じように扱うことはできません。
先ほどの例で、最終的にCが土地全部を取得したい場合を考えてみます。
従来の原則的な考え方では、まずCとDとの間でBの持分について遺産分割を行い、その後、AとCとの間で通常共有を解消する共有物分割を行うという、二段階の処理が必要でした。
つまり、
「相続人間の遺産共有を解消する手続」
と
「通常共有を解消する共有物分割手続」
は、本来別の手続です。
しかし、長期間にわたって遺産分割がされないまま共有関係が続いているケースでは、この二つの手続を別々に行うことが大きな負担になります。
そこで改正民法では、一定の場合について一つの共有物分割手続の中で処理できる特則が設けられました。
相続開始から10年経過すると共有物分割で一括処理できる場合がある
民法258条の2第2項では、共有物の持分が相続財産に属している場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、一定の条件のもとで、その相続財産に属する共有持分についても共有物分割をすることができると定められています。
これは、2023年4月1日に施行された改正民法によって設けられた制度です。
先ほどの例でいえば、Bが死亡してから10年以上が経過している場合には、一定の条件を満たせば、A・C・Dの共有関係について共有物分割訴訟の中で一括して整理することが可能になります。
法務省の資料でも、改正後は一定の場合に、通常共有と遺産共有を共有物分割手続で一元的に処理できることが示されています。
これは長期間未解決となっている共有不動産を整理するうえで重要な制度です。
「10年経過すれば必ず共有物分割できる」わけではない
注意したいのは、「相続から10年経てば自動的に遺産共有も共有物分割で処理できる」という制度ではないことです。
民法258条の2には重要な例外があります。
対象となっている共有持分について遺産分割の請求がされており、相続人が共有物分割によって処理することについて異議を申し出た場合には、この特則による処理はできません。
さらに、その異議申出には期間があります。
相続人が共有物分割請求を受けた裁判所から、その請求があった旨の通知を受けた日から2か月以内に裁判所へ異議を申し出る必要があります。
したがって、実際には、
・相続開始から10年を経過しているか
・遺産分割の請求がされているか
・相続人から異議申出がされているか
・異議申出の期間内か
などを確認する必要があります。
共有物分割では特別受益や寄与分がそのまま反映されるわけではない
もう一つ非常に重要なのが、相続人の取得割合です。
通常の遺産分割では、生前贈与などの「特別受益」や、被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした場合の「寄与分」が問題となり、いわゆる具体的相続分を考慮することがあります。
しかし、通常共有と遺産共有が併存するケースについて、相続開始から10年経過後に民法258条の2による共有物分割を行う場合、遺産共有持分を分割する際の基準は、原則として法定相続分または指定相続分となります。
法務省も、この制度について、具体的相続分ではなく法定相続分または指定相続分を基準として共有物分割を行うことを説明しています。
そのため、特別受益や寄与分を主張したい相続人にとっては、「共有物分割で処理するのか」「遺産分割手続で処理するのか」が重要になる場合があります。
単に「相続開始から10年経っているから共有物分割をすればよい」と判断するのではなく、相続人間の事情も確認する必要があります。
具体例で考える「通常共有+遺産共有」
具体例で整理してみましょう。
父Aと叔父Bが、土地を2分の1ずつ共有していたとします。
その後、叔父Bが死亡し、その相続人が子CとDだったものの、遺産分割をしないまま10年以上が経過しているケースです。
現在の所有関係は、
父A:通常共有持分2分の1
C・D:Bの持分2分の1について遺産共有
となります。
例えばCが土地全部を取得したい場合、原則的には、まずC・D間で遺産分割を行い、その後Aとの共有関係を解消するという方法が考えられます。
しかし、Bの相続開始から10年が経過しており、民法258条の2の要件を満たす場合には、共有物分割訴訟の中で、Aの通常共有持分だけでなく、C・Dの遺産共有部分についても一体的に整理できる可能性があります。
結果としてCが土地全部を取得し、AやDに対して相当する金銭を支払うという解決が考えられる場合もあります。
もっとも、具体的にどのような分割方法が認められるかは、不動産の状況や当事者の主張などによって異なります。
相続による共有不動産では登記の確認も重要
共有不動産を解消する際には、現在の登記名義だけを見て判断しないことも重要です。
登記上の共有者がすでに死亡しているにもかかわらず、相続登記がされていないケースがあります。
また、一度の相続だけでなく、相続登記をしないまま次の相続が発生している「数次相続」のケースもあります。
こうした場合には、まず戸籍を収集して相続関係を確認し、現在誰が権利を有しているのかを整理する必要があります。
2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されているため、共有関係の整理とあわせて相続登記についても確認しておくことが重要です。
共有持分を第三者へ売却する場合は慎重に
自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意なく第三者へ売却できる場合があります。
しかし、共有持分のみの売却は、不動産全体の売却とは事情が大きく異なります。
共有持分を取得した第三者が新たな共有者となるため、残された共有者との間で共有物分割を巡る交渉や訴訟に発展することもあります。
「すぐに持分を買い取ります」といった業者へ売却する場合には、価格が適正か、その後どのような手続が予定されているのかなどを慎重に確認することが大切です。
共有持分を売却する前に、まず他の共有者との間で共有関係を解消できないか検討することをおすすめします。
どの解消方法が適しているかはケースによって違う
共有名義不動産の解消方法に「これが常に正解」というものはありません。
誰も不動産を必要としていないのであれば、全員で売却する方法が合理的でしょう。
一方、共有者の一人が居住している場合には、その人が他の共有持分を買い取る方法が適していることがあります。
土地を物理的に分けられるのであれば、現物分割が適している場合もあります。
話し合いができないのであれば、最終的に共有物分割請求を検討することになります。
さらに相続が絡んでいる場合には、通常共有なのか遺産共有なのか、相続開始から何年経過しているのかによって利用できる手続が変わることがあります。
特に「通常共有+遺産共有」のケースでは、民法258条の2の10年経過後の特則を知らないまま手続を進めると、本来検討できた選択肢を見落とす可能性があります。
まとめ|共有名義は「誰が、どのような権利を持っているか」の確認から
共有名義不動産を解消する代表的な方法は、
1.共有者全員で不動産全体を売却する
2.自分の共有持分を他の共有者へ売却する
3.他の共有者の持分を買い取る
4.共有者間の協議によって共有物を分割する
5.共有物分割請求によって解消する
という5つです。
ただし、相続が関係する共有不動産では、単純な共有物分割だけでは解決できない場合があります。
特に、もともとの共有者が死亡したことで「通常共有」と「遺産共有」が併存している場合には、原則として遺産分割と共有物分割という異なる手続が問題になります。
一方、相続開始から10年を経過したケースでは、一定の要件を満たせば、民法258条の2により共有物分割手続の中で遺産共有部分についても一定範囲で一括して処理できる場合があります。
共有名義不動産の問題では、登記簿だけでなく、相続関係、持分割合、相続開始時期、遺産分割の有無などを確認したうえで、適切な解消方法を選択することが重要です。
共有者が増えてからでは解決が難しくなることもありますので、「将来売却したい」「今の共有状態を整理したい」と考えている場合には、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
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参考リンク


