「家族が揉めないように」と良かれと思って作成する遺言書。しかし、書き方や内容に一歩間違えると、せっかく書いた遺言書が無効になってしまったり、かえって残された家族のトラブル(争族)を引き起こしたりするケースが後を絶ちません。

今回は、遺言書作成において特によくある失敗例を5つご紹介します。ご自身の遺言書が「使えない遺言書」になっていないか、ぜひチェックしてみてください。

1. 【形式のミス】全文をパソコンで作成してしまった(自筆証書遺言)

手軽に作成できる「自筆証書遺言」で最も多い失敗が、法律で定められた「形式要件」を満たしていないケースです。

  • よくある失敗:

    本文をすべてパソコンでタイピングし、最後に署名と押印だけを手書きした。

  • なぜダメなのか:

    民法上、自筆証書遺言は「財産目録」を除くすべての本文・日付・氏名を遺言者が遺言者が自筆(手書き)しなければならないと定められています。パソコンで作成された本文は、原則としてすべて無効になります。

💡 ここに注意!

日付の「令和〇年〇月吉日」という曖昧な表記や、印鑑の押し忘れ(シャチハタの使用など)も無効の原因になります。日付は必ず「〇年〇月〇日」と特定できるように書きましょう。

2. 【内容のミス】財産の特定が曖昧で手続きができない

遺言書の内容をもとに、実際に不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続きを行うのは残された家族です。その際、記載が曖昧だと手続きが受け付けられないことがあります。

  • よくある失敗:

    「自宅の土地建物は長男に譲る」「〇〇銀行の預金は長女に譲る」

  • なぜダメなのか:

    「自宅」だけでは、どの土地・建物のことなのか法的に特定できません。また、銀行名だけでは口座(支店名や口座番号)が特定できず、金融機関での手続きが難航します。

正しい書き方のポイント

確実に行うためには、以下のように詳細に記載する必要があります。

財産の種類 失敗例 正しい記載例
不動産 自宅の土地・建物 登記事項証明書(登記簿)の通りに「地番」や「家屋番号」を正確に記載する
預貯金 〇〇銀行の預金 銀行名、支店名、預金種別(普通・定期など)、口座番号まで記載する

3. 【配慮の不足】「遺留分」を無視してしまい、余計に揉めた

「看病をしてくれた長男にすべての財産を譲りたい」というような、特定の誰かに偏った内容の遺言書もトラブルの火種になります。

  • よくある失敗:

    「すべての財産を長男に相続させる」と書き、次男には一切財産を残さなかった。

  • なぜダメなのか:

    法定相続人(配偶者や子供など)には、法律上最低限もらえる財産の取り分である「遺留分(いりゅうぶん)」が認められています。遺留分を無視した遺言書を作ると、遺言者の死後に次男が長男に対して「不公平だ、自分の取り分を支払え」と金銭を請求する(遺留分侵害額請求)トラブルに発展します。

4. 【遺言執行者の不在】手続きを任せる人を決めていなかった

遺言書は、書いた内容を「実行(手続き)」して初めて意味を成します。

  • よくある失敗:

    誰が手続きをするかを指定していなかったため、残された家族の間で「誰が仕事を休んで銀行や役所に行くのか」で揉めてしまった。

  • 対策:

    遺言書の中で、自分の代わりに遺言内容を実行してくれる「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」を指定しておくことが重要です。遺言執行者を指定しておけば、その人単独で専門的な手続きを進めることができるため、スムーズに相続が完了します。

5. 【認知症の壁】遺言作成時の「遺言能力」を疑われる

遺言書を作成する時点で、本人に「遺言内容を正しく理解する能力(遺言能力)」がなかったと判断されると、その遺言書は無効になります。

  • よくある失敗:

    認知症の症状が進み始めてから自筆で遺言書を書いた。死後、財産をもらえなかった親族から「この遺言書を書いたとき、親はすでに認知症だったから無効だ」と裁判を起こされた。

  • 対策:

    少しでも不安がある場合は、医師の診断書を取得した上で作成するか、公証人が関与する「公正証書遺言」での作成を強くお勧めします。

まとめ:確実な遺言書を作るなら「公正証書遺言」と「専門家への相談」を

遺言書にはいくつか種類がありますが、最も安全で確実なのは「公正証書遺言」です。

公証役場で公証人が法律に則って作成するため、形式不備で無効になるリスクがほぼゼロになり、原本が公証役場に保管されるため紛失や改ざんの心配もありません。

当事務所では、お客様のご希望をしっかりとお伺いした上で、

  • トラブルを未然に防ぐ文面の作成(遺留分への配慮など)

  • 財産の正確な調査と特定

  • 公正証書遺言の作成手続きのサポート(公証役場との調整・証人の引き受け)

などをトータルでサポートしております。「自分の書いた遺言書が大丈夫か不安」「家族のために不備のない遺言書を残したい」という方は、ぜひ一度お気軽に当事務所までご相談ください。