はじめに
不動産の登記簿を確認した際、何十年も前に設定された抵当権や根抵当権がそのまま残っているケースがあります。
たとえば、
- 昭和時代に設定された抵当権
- すでに返済済みと思われる古い担保権
- 金融機関が合併や解散をしている担保権
- 債権者の所在が不明になっている抵当権
などです。
こうした古い担保権は、一般的に「休眠担保権」と呼ばれます。
休眠担保権が残っていると、不動産売却や相続、建替え、融資の際に大きな支障となることがあります。
しかし、古い抵当権だからといって自動的に消えるわけではありません。
この記事では、
- 休眠担保権とは何か
- なぜ古い抵当権が残るのか
- 休眠担保権抹消の方法
- 令和3年改正による新制度
- 司法書士へ相談するメリット
について、京都の司法書士がわかりやすく解説します。
休眠担保権とは?
古い抵当権が登記簿に残っている状態
休眠担保権とは、長期間放置されている抵当権や根抵当権などの担保権のことをいいます。
たとえば、
- 昭和40年代の抵当権
- 返済済みだが抹消されていない担保権
- 会社が消滅した金融機関の抵当権
などが典型例です。
実際には借金が完済されていても、抵当権抹消登記をしていないと、登記簿上は担保権が残り続けます。
なぜ古い抵当権が残るのか?
昔は抹消登記をしないケースも多かった
現在では住宅ローン完済後に抵当権抹消をすることが一般的ですが、昔は次のような事情で放置されるケースがありました。
金融機関から案内がなかった
昔は現在ほど登記意識が高くなく、抹消手続きがされないこともありました。
書類を紛失した
抵当権抹消には、
- 登記識別情報
- 解除証書
- 委任状
などが必要になります。
しかし、長年の間に紛失してしまうことがあります。
債権者が行方不明
個人間の貸し借りでは、債権者が亡くなっていたり、所在不明になっていることがあります。
金融機関が統廃合している
古い抵当権では、
- 信用組合
- 農業会
- 戦前の金融機関
などが登場することがあります。
現在は存在しない法人であるケースも少なくありません。
休眠担保権を放置するリスク
不動産売却ができない
買主や金融機関は、抵当権が残った不動産を嫌います。
そのため、抹消を求められることが通常です。
相続登記で問題になる
相続登記を進める際にも、
- 古い担保権
- 所在不明の抵当権者
が問題になることがあります。
特に京都では、
- 古い町家
- 代々相続されている土地
などで休眠担保権が見つかるケースがあります。
新たな融資が受けにくい
住宅ローンや事業融資を受ける際、古い抵当権が障害になることがあります。
休眠担保権抹消の方法
方法1 通常の共同申請
もっとも一般的なのは、抵当権者と共同で抹消登記をする方法です。
必要書類として、
- 解除証書
- 登記識別情報
- 委任状
などを提出します。
しかし、休眠担保権では、
- 債権者が死亡
- 所在不明
- 法人解散
しているケースが多く、通常の方法が使えないことがあります。
方法2 判決による抹消
抵当権者と連絡が取れない場合、裁判をして判決を取得する方法があります。
ただし、
- 時間がかかる
- 費用負担が大きい
- 手続きが複雑
というデメリットがあります。
方法3 除権決定による抹消
公示催告を利用し、裁判所の除権決定を得て抹消する方法です。
ただし、
- 所在調査が厳格
- 手続き負担が大きい
という問題があり、実務上は利用しにくいケースもありました。
方法4 休眠担保権抹消制度
現在、実務で比較的利用されることが多いのが、不動産登記法70条4項後段による「休眠担保権抹消」です。
これは一定条件を満たす場合、単独申請で抵当権抹消ができる制度です。
休眠担保権抹消の要件
1.抵当権者の所在が知れない
まず、共同申請すべき抵当権者の所在が不明である必要があります。
そのため、
- 住民票調査
- 戸籍調査
- 法人調査
- 郵便送付
などを行います。
2.弁済期から20年以上経過している
休眠担保権抹消では、被担保債権の弁済期から20年経過している必要があります。
たとえば、
- 昭和50年弁済期
- 平成初期弁済期
などの古い担保権が対象になります。
3.供託が必要
被担保債権、
- 元本
- 利息
- 遅延損害金
を含めた金額を供託する必要があります。
供託とは?
法務局へお金を預ける制度
供託とは、法務局に金銭を預ける制度です。
抵当権者が行方不明でも、供託をすることで法律上の弁済効果を発生させます。
休眠担保権抹消のメリット
裁判をしなくてよい
大きなメリットは、裁判を経ずに抹消できる点です。
休眠担保権抹消のデメリット
供託金が高額になる場合がある
長期間経過しているため、
- 利息
- 遅延損害金
を含めると高額になるケースがあります。
調査が非常に大変
実際の実務では、
- 戸籍調査
- 法人調査
- 閉鎖謄本取得
- 清算人調査
など、多数の調査が必要になります。
司法書士の専門知識が必要になる場面が非常に多いです。
根抵当権は注意が必要
元本確定前は対象外
根抵当権については、元本確定前だと休眠担保権抹消制度を利用できません。
まず元本確定が必要になる場合があります。
令和3年改正で何が変わった?
令和3年の不動産登記法改正では、休眠担保権等の抹消制度が見直されました。
解散法人の担保権抹消制度が新設
法70条の2が新設され、
- 解散法人
- 長期間経過
- 清算人不明
などの場合に、単独抹消が可能となりました。
買戻特約の抹消も簡略化
契約から10年経過した買戻特約について、単独抹消制度が創設されました。
休眠担保権抹消でよくある相談
相続した土地に古い抵当権が残っていた
非常によくあるケースです。
特に、
- 昭和時代の住宅ローン
- 農協関連
- 個人間融資
などが多く見られます。
債権者が死亡している
個人間担保では、抵当権者がすでに死亡していることがあります。
その場合、
- 相続人調査
- 相続関係確認
が必要になる場合があります。
金融機関が存在しない
古い金融機関では、
- 合併
- 解散
- 商号変更
が繰り返されていることがあります。
調査には専門知識が必要です。
司法書士へ相談するメリット
登記と供託を一括対応できる
休眠担保権抹消では、
- 登記
- 戸籍調査
- 法人調査
- 供託
など複数の手続きが必要です。
司法書士へ依頼することで、スムーズに進めやすくなります。
法改正への対応
令和3年改正以降、制度が複雑化しています。
専門家へ相談することで、
- 最適な手続き選択
- 必要書類確認
- 法務局対応
を適切に進めることができます。
まとめ
休眠担保権とは、長年放置された古い抵当権等のことです。
抹消には、
- 所在調査
- 供託
- 法的要件確認
など専門的な対応が必要になります。
令和3年改正により制度は使いやすくなった一方、実務上の判断はより複雑になっています。
不動産売却や相続の前に、まずは登記簿を確認することが大切です。
休眠担保権抹消にお困りの方は、司法書士へお気軽にご相談ください。


