「遺言書が見つかったけれど、特定の兄弟だけにすべての財産を譲ると書かれていた」
「亡くなった父が、愛人に全財産を寄付する契約をしていた」
このように、不公平な遺言や生前贈与によって、本来もらえるはずの遺産がまったくもらえない、あるいは極端に少ないという事態が起きることがあります。
そんなときに、法律が保障する最低限の遺産の取り戻しを求める権利が「遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)」です。
この記事では、遺留分侵害額請求の仕組みや、自分がいくら請求できるのか、手続きの流れについて司法書士がわかりやすく解説します。
1. 遺留分侵害額請求とは?
遺留分侵害額請求とは、遺言や生前贈与によって「法律で保障された最低限度の遺産の取り分け(=遺留分)」を侵害された人が、多くもらいすぎている人に対して、その侵害された分を「お金(金銭)」で支払うよう請求することです。
以前は「遺留分減殺請求(げんさいせいきゅう)」と呼ばれ、土地や不動産そのものを分け合うルールでしたが、法改正により現在は「すべて金銭(お金)での解決」に一本化され、トラブルが実務的に解決しやすくなりました。
💡 ポイント
遺留分は、亡くなった人(被相続人)の意思(遺言)よりも優先される、残された家族のための強力な権利です。
2. 誰が、いくら請求できる?(遺留分の割合)
遺留分は、すべての法定相続人に認められているわけではありません。また、誰が相続人になるかによって、もらえる割合(法定遺留分)が変わります。
遺留分がある人・ない人
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遺留分がある人: 配偶者(妻・夫)、子供(孫)、親(祖父母)
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遺留分がない人: 兄弟姉妹(おい・めい)
※亡くなった人の兄弟姉妹には、法律上遺留分が一切認められていません。そのため、「兄に全財産を譲る」という遺言があっても、弟は遺留分を請求することはできません。
遺留分の具体的な割合
相続人の組み合わせによって、全体の遺産に対して以下の割合が「遺留分」として保障されます。
| 相続人の構成 | 相続人全体の遺留分割合 | 各個人の遺留分の目安(例) |
| 配偶者のみ | 遺産の 2分の1 | 配偶者:2分の1 |
| 配偶者 と 子供2人 | 遺産の 2分の1 |
配偶者:4分の1
子供:各8分の1 |
| 子供のみ(3人) | 遺産の 2分の1 | 子供:各6分の1 |
| 親のみ(父母) | 遺産の 3分の1 |
父:6分の1
母:6分の1 |
3. 遺留分侵害額請求の手続きの流れ
遺留分侵害額請求は、自動的にお金が振り込まれるわけではありません。自分で期限内にアクションを起こす必要があります。
① 遺留分が侵害されているか確認・計算する
まずは遺言書の内容、亡くなった人の財産(不動産、預貯金など)、過去の重大な生前贈与の有無を調査し、自分の遺留分がいくら侵害されているかを正確に計算します。
② 相手方に「遺留分侵害額請求」の意思表示をする
多く財産を受け取った人に対して請求を行います。後から「聞いていない」「期限が過ぎている」と言われるのを防ぐため、必ず「内容証明郵便(配達証明付き)」で書面を送るのが鉄則です。
③ 話し合い(交渉)
相手方と、支払う金額や支払い方法(一括か分割かなど)について話し合います。合意できたら、後々のトラブルを防ぐために「合意書(示談書)」を契約書の形で作成します。
④ まとまらない場合は調停・訴訟へ
話し合いがまとまらない、あるいは相手が無視する場合は、家庭裁判所に「遺留分侵害額の処分調停」を申し立てます。それでも解決しなければ、裁判(訴訟)で決着をつけることになります。
4. 【要注意】最大の落とし穴は「1年の時効」
遺留分侵害額請求で最も気をつけなければならないのが「期限(消滅時効)」です。
法律上、以下のいずれか早い方の期限を過ぎると、権利が完全に消滅してしまいます。
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「相続の開始」および「遺留分を侵害する遺言・贈与があったこと」を知った時から 1年間
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相続が始まった(亡くなった)時から 10年間
実際には、「亡くなって遺言書の中身を知った日から1年」というケースがほとんどです。1年というのは、遺産調査や話し合いをしているとあっという間に過ぎてしまいます。

