高齢の親について介護施設への入居を考え始めたものの、「特別養護老人ホームと有料老人ホームは何が違うのか」「サービス付き高齢者向け住宅でも介護を受けられるのか」など、施設の種類が多く、迷ってしまう方が多いです。
介護施設や老人ホームは、名称が似ていても、入居できる人、介護サービスの受け方、医療体制、費用、長期入居の可否などが大きく異なります。
また、施設への入居は、住まいを移すだけの問題ではありません。
人の判断能力が低下している場合には、入居契約や費用の支払い、自宅の売却・管理などに成年後見制度が必要になることがあります。さらに、施設へ住所を移した後の不動産登記、相続、遺言、死後の手続きについても考えておく必要があります。
本記事では、代表的な8種類の介護施設・高齢者向け住宅について、入居条件や特徴、費用の傾向を分かりやすく解説します。
「介護施設」と「老人ホーム」は同じではない
「介護施設」「老人ホーム」という言葉は、日常では広い意味で使われています。しかし、法律や介護保険制度上は、すべてが同じ分類ではありません。
介護保険上の「介護保険施設」は、次の3種類です。
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介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
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介護老人保健施設
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介護医療院
一方、有料老人ホームは老人福祉法に基づく施設であり、サービス付き高齢者向け住宅は高齢者住まい法に基づく「住宅」です。
さらに、認知症グループホームは地域密着型サービス、ケアハウスは軽費老人ホームに分類されます。
施設の名称だけでは、介護サービスが施設から一体的に提供されるのか、外部の介護事業者と別に契約するのかが分かりにくいため、契約前に仕組みを確認することが重要です。
介護施設・老人ホーム8種類の比較一覧
| 種類 | 主な入居対象 | 主な特徴 | 費用の傾向 | 長期入居 |
|---|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 原則として要介護3以上 | 生活全般の介護を受ける施設 | 比較的低め | 可能 |
| 介護老人保健施設 | 要介護1以上 | リハビリを受けて在宅復帰を目指す | 比較的低め | 原則として一時的 |
| 介護医療院 | 長期の医療・介護が必要な要介護者 | 医療と介護、生活支援を一体的に提供 | 比較的低め~中程度 | 可能 |
| 認知症グループホーム | 要支援2以上で認知症のある人 | 少人数で共同生活を送る | 中程度 | 可能 |
| 介護付き有料老人ホーム | 自立から要介護まで施設により異なる | 施設の職員から介護を受ける | 中程度~高め | 可能 |
| 住宅型有料老人ホーム | 自立から要介護まで施設により異なる | 介護は外部事業者と別に契約することが多い | 中程度~高め | 施設による |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 60歳以上または要支援・要介護者など | 安否確認・生活相談付きの高齢者向け住宅 | 中程度 | 住宅による |
| ケアハウス | 原則60歳以上で在宅生活に不安がある人 | 比較的低額で生活支援を受けられる | 比較的低め~中程度 | 施設による |
費用は、所得、要介護度、居室の種類、介護サービスの利用量、医療費、地域、施設の設備などによって異なります。上記はあくまで一般的な傾向です。
1.特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、常時介護を必要とし、自宅での生活が難しい人を対象とする施設です。正式には「介護老人福祉施設」といいます。
新規入所は原則として要介護3以上の人が対象です。ただし、要介護1または要介護2であっても、認知症の症状、家族による支援の状況、虐待のおそれなどにより在宅生活が難しい場合には、特例入所が認められることがあります。
食事、入浴、排泄、日常生活上の介護、機能訓練、健康管理などを受けられ、終身利用を前提とする施設も多くあります。
民間の有料老人ホームと比べると費用が抑えられる傾向がありますが、入所希望者が多い地域では、申込みから入所まで時間がかかる場合があります。単なる申込順ではなく、介護の必要性や家族の状況などを踏まえて入所の優先順位が判断されます。
2.介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、病院を退院した後、すぐに自宅へ戻ることが難しい人などが、リハビリテーションや介護を受けながら在宅復帰を目指す施設です。
医師、看護職員、介護職員、理学療法士、作業療法士などが連携し、必要な医療、介護、リハビリテーションを提供します。
特別養護老人ホームとの大きな違いは、老健が原則として「在宅復帰」を目的としている点です。入所後は定期的に状態が確認され、在宅復帰や別の施設への移行を検討します。
「老健は必ず3か月で退所しなければならない」と説明されることがありますが、一律の入所期限が決められているわけではありません。ただし、長期の生活の場ではないため、退所後の住まいや介護体制を早めに考える必要があります。
3.介護医療院
介護医療院は、長期的な医療と介護の両方を必要とする要介護者のための施設です。平成30年(2018年)4月に創設されました。
日常的な医学管理、看取り、ターミナルケアなどの医療機能と、食事、排泄、入浴などの生活施設としての機能を併せ持っています。
例えば、喀痰吸引、経管栄養、酸素療法など継続的な医療的ケアを必要とする人や、病院での急性期治療は終了したものの、家庭や一般的な介護施設での生活が難しい人が対象となります。
ただし、受け入れ可能な医療行為や看護職員の配置状況は施設によって異なります。「医療対応可能」と書かれていても、本人が必要とする処置に対応できるとは限らないため、個別確認が必要です。
4.認知症グループホーム
認知症グループホームは、認知症のある人が、5人から9人程度の少人数の単位で共同生活を送る施設です。正式名称は「認知症対応型共同生活介護」といいます。
原則として、次の条件を満たす必要があります。
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要支援2または要介護1以上の認定を受けている
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医師から認知症と診断されている
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施設が所在する市区町村に住民票がある
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少人数での共同生活が可能である
認知症グループホームは地域密着型サービスであるため、原則として施設の所在する市区町村の住民が利用します。
家庭に近い環境で、食事の準備や掃除などを職員と一緒に行いながら、本人の能力を生かした生活を送ることを目指します。
一方、常時高度な医療を必要とする場合や、身体状態が著しく悪化した場合には、退居や他施設への移行が必要になることがあります。看取り対応の有無も施設ごとに異なります。
5.介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、都道府県などから「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホームです。
施設が作成するケアプランに基づき、施設の介護職員や看護職員から、食事、入浴、排泄などの介護サービスを一体的に受けられます。
入居対象は、自立している人から要介護者まで施設によって異なり、「介護専用型」「混合型」などがあります。
施設内で介護サービスが完結しやすいことがメリットですが、入居一時金、家賃、管理費、食費、介護保険の自己負担、上乗せ介護費用などがかかる場合があります。
月額利用料だけでなく、要介護度が上がった場合の追加費用、医療費、紙おむつ代、理美容代、通院付き添い費用なども確認しましょう。
6.住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、食事の提供、掃除、見守りなどの生活支援を受けられる高齢者向けの施設です。
介護付き有料老人ホームとの大きな違いは、原則として施設から介護保険サービスが一体的に提供されるのではなく、入居者が訪問介護、通所介護、訪問看護などの外部事業者と個別に契約する点です。
必要なサービスを選択しやすい反面、要介護度が高くなり介護サービスの利用量が増えると、自己負担額が想定以上に増えることがあります。
同じ建物に訪問介護事業所などが併設されていても、老人ホームの利用契約と介護サービス契約は別契約であることがあります。事業者を自由に選べるか、併設事業者の利用が事実上の条件になっていないかも確認が必要です。
なお、有料老人ホームには「健康型有料老人ホーム」もあります。主に自立した高齢者を対象とし、介護が必要になると退居しなければならない施設もあるため、将来の介護状態まで考えて選ぶ必要があります。
7.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー構造を備え、安否確認と生活相談サービスを提供する高齢者向けの住宅です。
一般的な入居対象は、60歳以上の人または要支援・要介護認定を受けた60歳未満の人と、その同居者などです。
「介護施設」ではなく、基本的には賃貸住宅などの「住まい」である点が特徴です。そのため、介護サービスが必要な場合は、外部の訪問介護や訪問看護などを利用するのが基本です。
ただし、介護保険法上の特定施設の指定を受けているサ高住や、有料老人ホームにも該当するサ高住もあります。名称だけでは介護サービスの提供方法を判断できません。
「24時間安心」などと案内されていても、夜間の職員配置、緊急時対応、医療行為、認知症への対応は住宅によって異なります。見守りの回数、夜間の連絡先、救急搬送時の対応などを具体的に確認しましょう。
8.ケアハウス(軽費老人ホーム)
ケアハウスは、家庭環境や住宅事情などにより、自宅での生活に不安がある高齢者が、比較的低額な料金で利用できる施設です。軽費老人ホームの一種です。
原則として60歳以上の人が対象で、食事、生活相談、緊急時対応などの支援を受けられます。
一般型ケアハウスでは、介護が必要になった場合に外部の介護サービスを契約します。一方、特定施設の指定を受けた介護型ケアハウスでは、施設から介護サービスを受けられます。
所得に応じて事務費が決まる施設もありますが、入居条件や介護への対応範囲は施設によって異なります。介護度が重くなった場合も住み続けられるのか、事前に確認する必要があります。
なお、ケアハウスとは別に「養護老人ホーム」があります。養護老人ホームは、65歳以上で、環境上・経済上の理由により自宅での生活が難しい人を対象とする措置施設です。本人と施設が直接契約して入所するのではなく、市区町村が必要性を調査して入所を決定します。
老人ホームの費用を比較するときの注意点
老人ホームの費用は、「月額利用料」だけでは判断できません。主に次の費用を確認します。
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入居一時金・前払金
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家賃または居住費
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管理費・共益費
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食費
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介護保険サービスの自己負担
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医療費・薬代
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紙おむつ代や日用品費
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通院・買物などの付き添い費用
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理美容代
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レクリエーション費
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退去時の原状回復費用
介護保険サービスの自己負担割合は、所得に応じて原則1割から3割です。ただし、家賃、居住費、食費、日用品費などは介護保険の対象外となるものがあります。
特別養護老人ホーム、老健、介護医療院では、一定の所得・資産要件を満たす人について、居住費と食費を軽減する「負担限度額認定」が利用できる場合があります。
有料老人ホームで入居一時金を支払う場合には、次の点も確認しましょう。
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入居一時金のうち、契約時に償却される金額
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償却期間
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短期間で退去・死亡した場合の返還金
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事業者が倒産した場合の保全措置
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クーリングオフに相当する短期解約特例の内容
重要事項説明書と入居契約書は、必ず契約前に受け取り、家族を含めて確認することが大切です。
介護施設・老人ホームの選び方
1.入居する目的を明確にする
「家族の介護負担を減らしたい」「退院後のリハビリを受けたい」「認知症でも安心して暮らせる場所を探したい」「医療的ケアや看取りに対応してほしい」など、入居の目的によって適する施設は異なります。
2.現在だけでなく将来の状態を考える
入居時には歩行できていても、数年後には車いすや常時介護が必要になる可能性があります。
要介護度が重くなった場合、認知症が進行した場合、経管栄養などの医療的ケアが必要になった場合でも入居を継続できるか確認しましょう。
3.医療・看護体制を確認する
看護職員が勤務している時間帯、夜間の連絡体制、協力医療機関、訪問診療、服薬管理、看取りへの対応などを確認します。
「看護師在籍」という表示だけでは、24時間配置されているとは限りません。
4.退居条件を確認する
入院が長期化した場合、認知症の症状が強くなった場合、利用料を滞納した場合などに、退居を求められることがあります。
施設側から契約を解除できる条件、退居までの猶予期間、居室を空けておける期間などを確認することが大切です。
5.実際の総額で比較する
パンフレットに書かれている月額利用料だけでなく、介護度が上がった場合、医療が必要になった場合、外部サービスを追加した場合の費用を試算しましょう。
現在の年金・預貯金だけでなく、「何年間支払いを続けられるか」という視点も必要です。
施設入居前に司法書士へ相談したい法律問題
本人に入居契約を結ぶ判断能力があるか
施設への入居は、入居契約、介護サービス契約、費用の支払いなどを伴う法律行為です。
認知症があっても、直ちにすべての契約ができなくなるわけではありません。大切なのは、本人が契約の内容や費用、生活上の変化を理解し、判断できる状態かどうかです。
判断能力が十分でない場合、家族であっても、当然に本人を代理して施設契約を結んだり、本人名義の預貯金を自由に使用したりできるわけではありません。
本人の判断能力に応じて、成年後見、保佐、補助などの法定後見制度を検討することがあります。元気なうちであれば、将来に備えて任意後見契約や財産管理等委任契約を準備する方法もあります。
自宅を売却するか、残すか
施設へ入居した後、自宅を次のどの状態にするか考える必要があります。
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売却して施設費用に充てる
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賃貸に出して収入を得る
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家族が住む
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空き家として維持する
本人の判断能力が低下した後では、家族だけの判断で本人名義の自宅を売却することはできません。成年後見制度を利用して売却する場合、本人の居住用不動産については家庭裁判所の許可が必要になることがあります。
家族信託も、本人の判断能力が十分なうちに契約しておく必要があります。認知症が進行してから、過去にさかのぼって家族信託を設定することはできません。
施設への転居と住所変更登記
施設への転居に伴って住民票上の住所を変更した場合でも、本人が所有する土地・建物の登記上の住所が自動的に変更されるわけではありません。
令和8年(2026年)4月1日から、不動産の所有者は、住所や氏名を変更した日から2年以内に住所・氏名変更登記を申請することが義務化されました。
施設への転居後も自宅や賃貸不動産を所有している場合には、登記上の住所を確認しておきましょう。
遺言・任意後見・死後事務の準備
施設へ入居する時期は、財産や将来の手続きを整理する機会でもあります。
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誰にどの財産を相続させるか
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施設費用をどの財産から支払うか
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判断能力が低下したときに誰へ財産管理を任せるか
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死亡後の施設費用や医療費を誰が精算するか
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施設の居室に残った家財を誰が引き取るか
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葬儀、納骨、行政手続きを誰に依頼するか
このような事項について、遺言書、任意後見契約、財産管理等委任契約、死後事務委任契約などを組み合わせて備える方法があります。
特に、子どもがいない人、親族と疎遠な人、身近に頼れる人がいない人は、施設への入居を決める前から準備を始めることが重要です。
まとめ
介護施設・老人ホームは、名称だけで選ぶのではなく、入居目的、介護度、認知症の状態、医療の必要性、費用、将来の退居条件などを比較して選ぶ必要があります。
また、施設への入居に伴い、自宅の管理・売却、預貯金の管理、入居契約、成年後見、住所変更登記、遺言、死後の手続きなど、さまざまな法律問題が生じます。
本人の判断能力が低下してからでは選択できる対策が限られることがあります。将来、介護施設への入居を検討している場合は、元気なうちから家族で話し合い、必要に応じて専門家へ相談することをおすすめします。
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参考リンク
厚生労働省・介護サービス情報公表システム:公表されている介護サービスについて
国土交通省・厚生労働省:サービス付き高齢者向け住宅の制度について
裁判所:成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ


